3月29〜30日にツインリンクもてぎで、いよいよ幕を開けるスーパー耐久シリーズ。いきなり5時間耐久という長丁場からのスタートで、波乱の展開も予想される一方で、盛り上がりに欠ける可能性は低そう。こと今回見どころを紹介するST-4クラスとST-5クラスには、話題のニューマシンが登場するからだ。

　まずは開幕戦のエントリーが19台にも達したST-4クラス。トヨタ86が5台、ホンダS2000が4台、ホンダ・インテグラが3台に、ホンダ・シビックがFD2とFN2が1台ずつ、アバルト695が1台、さらにマツダ・ロードスターが1台増えて2台と、相変わらず車種のバラエティにも富んでいる。ところで、エントリーリストを見ると、「おや？」と思うクルマがあるはずだ。

　それがターマック・プロレーシングチームのトヨタ・ヴィッツGRMNターボ、そしてG-Tech RacingのG-Tech Sportster GT/Rなるクルマである。前車がどんなクルマかは理解できるだろうが、1500ccのターボエンジンを搭載するだけに、排気量換算すると2000ccの上限を超えてしまう。これは厳密に言うとST-3クラスの扱いながら、ニッサン・フェアレディZやレクサスIS350相手では勝ち目がないのは明らかということで、昨年のアバルト同様、特認での参戦となる。

　そして、Sportster GT/Rとは平たく言うと、アバルトのチューニングカーのよう。どの程度改造されているかは未知数ながら、既存のST-4車両を明らかに上回るようであれば、GRMNターボともに重量面での性能調整が行われることとなっている。

　実際のところは、いきなりの大活躍はあまり期待できないはずだ。熟成が進んでからの真価が問われることとなろうし、当面は既存の車両によってトップが争われるだろう。その中でも連破を狙うTRACY SPORTSのS2000、その41号車は引き続きAドライバーは植松忠雄で、今年スーパーGTにもデビューする藤田竜樹と新たにコンビを組む。また昨年、植松をアシストした井入宏之は再びS2000を駆るも、SKR ENGINEERINGに移り、中村嘉宏と浜野彰彦とのトリオとなる。

　トヨタ86は昨年、優勝も飾ったチームが戦いの核になりそうだ。GAZOO Racing SPIRITは影山正彦、蒲生尚弥、井口卓人のままで挑むのに対し、ENDLESS SPORTSは村田信博のみそのままで、残るふたりはST-3クラスから移行の小泉和寛、S耐初挑戦の小河諒に改められた。余談ながら、今年の小河はポルシェカレラカップ、GR 86/BRZ、そしてF4 FCクラスとあわせ4カテゴリーに出場。多忙を極めることになりそうだ。

　ロードスターは昨年もスポット参戦の村上モータースに加え、TC CORSEも戦列に。パーティレースで培った実績を、どう活かすか注目したい。また、徐々に少数派になりつつあるが、インテグラで注目どころは小林自動車レーシングプロジェクト。小林康一と昨年もスポットで加わったピストン西沢、さらに塩谷烈州の組み合わせは、かなり強力と予想される。

　ST-5クラスではホンダ・フィット3の参戦で、大いに盛り上がりを見せそうだ。3月上旬に行われた公式テストでも、いきなりトップタイムが叩き出されたからである。開幕戦には3台が出場。いきなりレコードタイムに相当する、2分20秒262をマークしたのはTEAM SPOON。引き続き松井猛敏と中島保典がドライブするばかりか、なんと荒聖治の加入も決定。テストの勢いのまま、シーズンを駆け抜けてしまう可能性もないとは言い難い。また、昨年のチャンピオンチーム、BRP★J'S RACINGは2台体制とし、1台をフィット3に。チーム代表でもある奥村浩一と大野尊久を中心に69号車を走らせる。もう1台はTeam BOMEXから。こちらも山下潤一郎と山田英二がチームをリードしていくだけに、面白い存在になりそうだ。

　この他にもST-5クラスには、新旧トヨタヴィッツ、マツダデミオ、そしてフィット2も出場する。車種のバラエティではST-4クラスにも準じ、昨年も激しいバトルが繰り広げられてきた。それを上回ることを期待したい。