伝統あるストリートレースでダリオ・フランキッティが優勝
武藤英紀は20位でフィニッシュ
2009年4月19日(日)
決勝
会場:ロングビーチ特設コース(1.968マイル)
天候:快晴
気温:34~36℃
35回目を迎えるアメリカ最大のストリートレース、ロングビーチ・グランプリで勝利を飾ったのは、ダリオ・フランキッティ(Target Chip Ganassi Racing)だった。2007年にインディ500で優勝し、同年のIRL インディカー・シリーズのチャンピオンにもなったフランキッティは、新たな挑戦を求めて08年からストックカーレースに転向した。しかし、彼は自分がオープンホイールでの戦いを最も得意とし、それが最もエンジョイできるものであると再認識し、今年からインディカーへと復帰した。そして開幕2戦目、真夏のような日差しの下、超満員のファンを前に争われた85周のレースで早くも表彰台の中央に立つこととなった。今回の優勝はフランキッティにとってIRL インディカー・シリーズのロードレースにおける初めてのものとなった。
予選2番手でフロントロー外側グリッドからスタートしたフランキッティだったが、スタート直後のターン1で4番手まで後退。しかし、Target Chip Ganassi Racingは、マシンを優勝するにふさわしいセッティングに仕上げていた。また、序盤のポジションダウンを逆に利用したピット作戦を採って、26周目にトップの座を手に入れたフランキッティは、マシンの力をフルに引き出す走りを続け、2位以下を突き放して歓喜のチェッカーフラッグを受けた。
17周目に1台がアクシデントを起こしたとき、フランキッティ陣営はフルコースコーションが出されると予想して彼をピットへ呼び入れた。ところが、ここではフルコースコーションは出されなかった。彼らにとって幸運だったのは、この直後に2台が絡むアクシデントが発生し、フルコースコーションが出されたことだった。
このフルコースコーションで彼以外のほとんどがピットストップを行ったとき、すでにピットインを済ませていたフランキッティはコース上に残り、難無くトップに躍り出た。しかしながら、1回目のピットストップを早めに行ったため、燃費を大きくセーブしなければライバル勢より一度多いピットインをしなくてはならない状況となった。その結果、55周目まで2回目のピットストップを引っ張ることができればもう1回の給油でゴールまで走りきれる計算のところ、フランキッティは2周届かない53周でピットインを行った。すると、この直後にまたしてもアクシデントによるフルコースコーションが発生。フランキッティは前回同様に他車がピットに入ったことでトップに返り咲くことができた。
再びトップに立った上、この時点でのフルコースコーション発生によって燃費の心配も不要となったフランキッティは、レース終盤に2位へと浮上してきたポールスタートのウィル・パワー(Team Penske)を悠々と引き離し、キャリア9勝目へと走りきった。2位はパワー、3位は予選11番手だったトニー・カナーン(Andretti Green Racing)だった。
カナーンの後ろの4位でフィニッシュしたのは、女性ドライバーで昨年のインディ・ジャパン ウイナーのダニカ・パトリック(Andretti Green Racing)。彼女が予選22番手から4位まで大きく飛躍できたのは、レースの序盤にフランキッティと同じ絶妙のタイミングで行ったピットストップと、トップグループと同じラップタイムで走れるだけのマシンセッティング、そして、彼女のミスのないドライビングによるものだった。
武藤英紀(Andretti Green Racing)は、予選順位と同じ17位で序盤を走行。多くのドライバーと同じく、1回目のフルコースコーション中だった19周目に最初のピットストップを行った。リスタートが切られたあとの24周目、武藤がヘアピン状の最終コーナーへとアプローチした際に数台前で接触があり、1台がスピンして進路をふさいだ。武藤は目の前を走っていたジャスティン・ウィルソン(Dale Coyne Racing)のマシンを避けきることができずマシンにダメージを受けた。ピットに戻ることができた武藤は、曲がったサスペンションとフロントウイングを交換してレースに戻り、20位でゴールした。
コメント
ダリオ・フランキッティ(優勝)
「インディカーのロードレースで優勝するのは、今回が初めてだ。ついに勝利を飾ることができ、とてもうれしい。今日はマシンもすばらしかったが、チームの作戦が何より見事だった。ピットインするタイミングが完ぺきだったからトップに立つことができたし、優勝することもできた。スタンドは超満員だったし、ロングビーチならではの興奮にサーキット全体が包まれていた。すばらしい一日となった」
ウィル・パワー(2位)
「ピットとの無線が通じなくなり、マシンのテレメトリーも一切働いていなかったので、経験に基づいた感覚だけでドライビングを行い、ピットボードによる情報だけで戦うしかなかった。そうした難しい状況を考えれば、満足のいく結果を手に入れることができたと思う。チームが3台目のマシンを用意し、走るチャンスを与えてくれたことに深く感謝したい」
トニー・カナーン(3位)
「プレッシャーをかけられた方がいい仕事ができる。我々はそういうドライバー、そういうチームなのだろう。今日のAndretti Green Racingはすばらしいレースを戦っていた。我々は多くのポイントを稼ぐことができたし、チーム自体の進歩もレースを戦う中で確認することができた。勝てる力を備えたマシンを手にできたときには必ず優勝し、もし勝てないマシンであったら、表彰台でフィニッシュする。それがチャンピオンシップの戦い方だ」
武藤英紀(20位)
「決勝用マシンのハンドリングはよかったです。チーム全体でロードコース用セッティングを向上させることができていたと思います。ソフトタイヤでスタートし、ハードに履き替えてからもマシンのフィーリングは非常によかった。しかし、何台か前でオーバーテイクをミスしたドライバーがいて、玉突き事故が発生。自分としては前のクルマを避けたつもりでしたが、ぶつかってしまいました。今回は土曜日に自分のミスでアクシデントを起こしたことが大きなマイナスとなっていましたが、開幕2戦で続けてアクシデントに巻き込まれるという不運な面もあったと思います。来週は今シーズン初めてのオーバルレースですから、気持ちをリフレッシュしてレースに臨みます」
エリック・バークマンHPD社長
「開幕戦に続いてすばらしいレース、すばらしいイベントだった。多くのファンがロングビーチのストリートサーキットに集まり、彼らはインディカー・レースを情熱的にエンジョイしてくれていた。23台のマシンがターン1へといっせいに飛び込んでいく様子は壮観で、フルコースコーションのラップも少ないエキサイティングなレースだった。結果だけを見れば歴史と実績のあるチームのドライバーたちが上位を占めたが、予選でも決勝でもすばらしいパフォーマンスを見せた若いドライバー、新しいチームがあり、今シーズンのこれからがますます楽しみになるレースとなった」
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