第20回目という記念大会となったアジアクロスカントリーラリー(AXCR)が、8月14日(金)にタイのチェンマイでフィニッシュした。
チェンマイを9日にスタートし、タイ北部で6日間にわたって行われた今回のAXCRは、参加選手たちの想像を遥かに超える厳しい戦いの毎日だった。当地はもともと降雨量の多い地域だが、それに雨季が重なったことで連日大雨が降り、山岳地帯やジャングル中心のコースは非常にマディなコンディションに。コース上をいく筋にも横切る河川は雨で水かさが増し、大人の胸近くまで水位が上がった河を渡るようなシチュエーションも多かった。参加者によれば、少なくとも過去3年間でもっとも厳しい設定のコースだったと言う。完走者全員が胸を張る権利を有するラリーだったと言えるだろう。
ツーアンドフォーモータースポーツから出場の青木孝次にとって、今回は三菱アウトランダーPHEVによる参戦3年目となった。参加者中唯一となるエレクトリックマシンは初年度の2013年から三菱自動車の技術支援を受けてきたが、マシンのチューニングレベルは年々向上。今年は悪路走破性、ハンドリング性能の向上、そしてPHEVユニットのパフォーマンスアップという3つのテーマが大きく底上げされた。
アウトランダーPHEVは乗用車のシャシーをベースとするSUVであり、オフロード走行に軸足を置いて開発されたクロスカントリー車とは、もともと目指す方向性や使用用途が異なる。しかし、市販車に準じる仕様のマシンでも去年、一昨年と完走を果たすなど、極悪路にも十分対応できることが証明されていた。それだけに、チューニングレベルが格段に高められた今回のマシンに対する期待は高かったが、青木と三菱のエンジニアは、ラリー期間中様々な難題に直面し、タフな毎日を送った。
車高アップと大径タイヤの採用による悪路走破性の向上に関しては、予想どおりの結果を示したといえる。従来は迂回していたような河川や泥濘地でも青木は躊躇なく突き進み、アウトランダーPHEVはよりハイレベルな改造が施された本格的クロカンマシンと遜色のないオフロード性能を発揮。そして、三菱がS-AWCと呼ぶ車両運動統合制御システムも以前より制御が緻密となり、ドライバーの意志に近いハンドリングを実現できるようになった。このあたりは、量産車開発に携わる三菱のエンジニアが青木と綿密に相談をしながら、連日S-AWCセッティングを少しづつ変更していった成果が表れたといえる。
(後編に続く)
