可夢偉には、これまでも何度か苦しい時期はあった。ティモ・グロックの代役として出場したトヨタでの2戦目で見事に入賞したにも関わらず、その2日後にチームがF1から撤退すると言われた2009年。自身、初表彰台を獲得したにもかかわらず、翌年のシートを失った2012年……。

 今回は所属するケータハムがF1から撤退したわけでもなく、シートを失ったわけでもないが、シーズン中にチームオーナーが変更され、先行きが不透明な状態でレースをしたという点では、これまでの2回と同じように厳しい状況にある。

 それでも、可夢偉は木曜日にナイジェル・マンセルとの記者会見に臨み、金曜日はフリー走行1回目をチームの方針で若手ドライバーに譲り、土曜日の予選ではチームの人為的ミスによってQ2進出を逃しても心を切らさず、レースに挑んだ。そしてそのレースでは、目の前でコントロール不能になったキミ・ライコネン(フェラーリ)をとっさの判断で回避した際にマシンにダメージを負い、ダウンフォースが欠落する中で完走。本来であれば、このような状況を生んだ前オーナーと前チーム代表に、恨み節のひとつやふたつ言いたいところである。

 しかし、可夢偉は彼らへの不満は口にしなかった。なぜなら、可夢偉はこのような事態になったことを残念に思っているものの、一方で今年シートを与えてくれたシリル・アビデブール前代表とトニー・フェルナンデス前オーナーに感謝しているからである。

 レース後、次戦ドイツGPのことを尋ねると、「何も言われない限り、(ホッケンハイムへは)行きます」という答えにとどめた可夢偉。新しくオーナーとなったクリスチャン・アルバースと、彼とともにチームに加入したコリン・コレスは、可夢偉に感謝される存在となるのか? それとも恨まれ役となるのか? それは可夢偉にも、もしかするとアルバースやコレスにもわからない状況のまま、イギリスGPは終了したのかもしれない。

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