■ベルナルド・ソウザ|ラリーの世界からサーキットレースへ

 次に紹介するのは、現在プロトン・コンペティションの77号車フォード・マスタングGT3のステアリングを握っている38歳のポルトガル人、ベルナルド・ソウザ。

 ソウザは、クリスティアーノ・ロナウドの出身地としても知られるマデイラ島の出身だ。この島、ポルトガル領だが地図を調べると、モロッコの沖合にあって、本土とはかなり距離があるのだが、そこで行われていたラリーイベントを主催していたのが、ソウザの両親。特に父親のリカルドは大のモータースポーツ好きで、ベルナルドも大いにその影響を受けた。

 7〜8歳の頃には、父に連れられてゴーカートを初体験。そこでモータースポーツにハマった。それからはしょっちゅうカートに乗り、長じるにつれてポルトガル本土や他のヨーロッパの国でもカートの選手権に出場していくようになっていく。ワークスカーターとして活躍を続けていたそうだ。

 そして、17〜18歳の頃、カートからステップアップを目指して、フォーミュラ・ルノーのテストに参加。その一方、ラリーカーでもテストを行った。サーキットレースをするか、ラリーをするか迷っていた時期でもある。が、実際に両方でテストをしてみると、ラリーカーでドリフトしたり、ジャンプしたりするのが楽しく、結局はラリーを選ぶ。

 初めて出場したラリーは2005年、ドライブしたのはフォード・エスコートということで、フォードとは最初から縁があったそうだ。そこからPWRCなどで活躍した後は、しばらく活動を休止。そして、昨年になって、今度はサーキットレースを開始した。

「昔から、『僕はサーキットレースをやるべきなんじゃないか』って考えを、どこかで持っていたんだよ。カート時代から他の選手と争うのを楽しいと思っていたし。そこで、去年思い立ってトヨタのGT4カーでレースを始め、4レースに出場した後、今年はWECに出ることになったんだ。フォードのトライアウトに受かったからね」

 さすがカート時代から活躍してきただけあって、極めてポテンシャルの高いジェントルマンというわけだ。

 そんなソウザの普段のビジネスは観光業。ポルトガルで船やカタマランを使ったツアーなどを主催している。それに伴って、船を整備する会社も持っているそうだ。また、それだけでなく自身のラリーチームも所有。モータースポーツ関連ビジネスも行なっているのだそうだ。両親もまた船会社を経営しているのだが、そこで学んだ経験を自身の事業にも活かしているという。

ベルナルド・ソウザ
77号車フォード・マスタングGT3をドライブするベルナルド・ソウザ

■ステファノ・ガットゥーゾ|かつてはフォーミュラでステップアップ

 最後に紹介するのは、現在プロトン・コンペティションの88号車フォード・マスタングGT3をドライビングしている41歳のイタリア人、ステファノ・ガットゥーゾ。彼もソウザと同様、ただのジェントルマンドラバーではない。父の影響で5歳の頃からレーシングカートを始め、若い頃はプロのレーシングドライバーを目指して活動してきているからだ。

 カートの後は、2002年にイタリア・フォーミュラ・ルノーで4輪レースデビュー。さらに、イタリアF3、そしてイタリアF3000、ユーロシリーズ3000と、フォーミュラカーでキャリアを積んできているのだ。その後、2007年にはプロになることは断念してGTに転向したものの、父の会社で働きながら、常にレース活動を続けてきた。

 出走したレース数が少ない年も中にはあったのだが、それでもこれまでインターナショナルGTオープンやイタリアGT選手権、ブランパンシリーズ、スパ24時間といったレースに、フェラーリやランボルギーニといったクルマで腕を磨いてきている。

 そして、今年は初めてフォード・マスタングのステアリングを握っているわけだが、このクルマに対しては最初から好印象を持ったのだそうだ。

「昨年、初めてバーレーンでテストした時から、このクルマは気に入ったよ。このクルマのドライビングスタイルもすごく好きだ。新時代GT3のクルマだから、僕がこれまでに乗ってきたクルマとは大きく違うんだよ。パワーも違うし、耐久レースで上手に走らせるための戦略も違っている。でも、これまで乗った中でもベストなクルマだね」

 またWECという世界選手権も、ガットゥーゾにとっては初めての経験となるが、とても楽しんでいると言う。

「この選手権は、自分が参戦できる中で、世界最高だと思っている。僕は耐久レースが好きだし、レベルがとても高い。チームもドライバーもね。プロドライバーもだけど、ブロンズドライバーたちもみんな経験豊富で速いんだ。だからこそ楽しい。それにル・マン24時間レースがあるからね。ル・マンはある意味クレージーなイベントだけど(笑)、それでもあのレースに出ることが夢だったんだ。本当にあの10日間の雰囲気は、言葉で言い表せないほど特別だよ」

 ちなみに現在、彼はワマラというシリコン製品の会社のオーナー。父の会社から独立する形で、2018年に立ち上げた新しい会社だ。作っているのは、医療用やキッチン用のシリコンツールの数々だという。イタリアだけでなく、アメリカや中国などにも商品を輸出しているとのことだった。日本には未上陸だが将来的には日本でも商品を展開したいという希望を持っているそうだ。

ステファノ・ガットゥーゾ
88号車フォード・マスタングGT3をドライブするステファノ・ガットゥーゾ

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