クリス・ミースが3周目にカンガルーに接触したことで、HRTのフォード・マスタングGT3は早々にレースを終えることとなったが、オーストラリアを象徴するこの動物をめぐるアクシデントは、これだけではなかった。

 チームWRTの32号車BMWとティガニ・モータースポーツの6号車メルセデスAMGも、レース開始1時間で別のカンガルーに接触。さらにWRTでは46号車のバレンティーノ・ロッシもさらに2頭のカンガルーを目撃している。

「確かに、目の前にいた。幸いにも、彼は生きていた」とロッシは語った。

 野生動物の問題について何か対策を講じるべきかと問われたロッシは、「毎年、カンガルーの問題については僕らもよく話をしているんだ。ここは特別な場所で、特別なコースだ。このコースは1年にたった5回しか使われない。マウント・パノラマでは、これがルールなんだ。ここでは、この種の危険はつきものだ」と答えた。

バレンティーノ・ロッシ
総合3位で2年連続表彰台獲得となった46号車BMWのバレンティーノ・ロッシ

 一方、無念のミースはバサースト12時間レースへの復帰を誓っている。

「僕は今でも、オーストラリアを愛している」とミース。

「必ず戻って来るよ。息子にはカンガルーのおもちゃを買ってきてほしいと頼まれたけど、それはできない。コアラでもウォンバットでも何でも買ってあげようと思うけど、カンガルーだけは絶対に買わないね」

フォード・マスタングGT3
早朝のグリッドで、レースのスタートを待つ64号車フォード・マスタングGT3 2026バサースト12時間

■カンガルーとの衝突で直線パフォーマンス低下

 プロクラスにエントリーしたティガニの6号車メルセデスAMGも、レース序盤にカンガルーによるダメージで後退を余儀なくされた。

 テクニカルディレクターのマット・ハーベイによると、このダメージが、リードラップに復帰した際にピット戦略をオフセットするというチームの判断に影響を与えたとのこと。ジェイデン・オジェダがグリフィンズ・ベンドでチャズ・モスタートがドライブするスコット・テイラー・モータースポーツのメルセデスAMGと接触しクラッシュしたため、最終的にこのマシンはリタイアとなった。

 ハーベイはSportscar365に対し、こう語った。

「レース序盤、32号車(WRTのBMW)がカンガルーを避けるために急ハンドルを切ったため、カンガルーが我々のフロントグリル、バンパー、ボンネットにぶつかってしまった」

「この事故で多くの問題が発生し、解決のために2回もガレージにマシンを持ち込む必要があった。リードラップに戻った後、おそらくダメージの影響で直線でのパフォーマンスが少し落ちてしまったため、戦略をオフセットすることにした。後ろの車は燃料がもっとあったので、我々は先頭をキープする必要があったが、残念ながらターン2で(モスタートが)我々のマシンを不安定にさせ、ウォールに衝突してしまった」

 オジェダはモスタートとの衝突を振り返り、Sportscar365にこう語った。

「追加の燃料補給なしでも完走できた可能性があった、戦略外のマシン群をリードしようと、懸命にレースをしていた。数周、その激しさで攻め続け、マウンテンストレートで強いプッシュを受け、マーブルに乗ってウォールに接触してしまった。そして、その途中で222号車(スコット・テイラーのメルセデスAMG)に接触してしまったんだ」

メルセデスAMG GT3エボ
ティガニ・モータースポーツの6号車メルセデスAMG GT3エボ

 一方、モスタートはオジェダとの衝突を「残念」と表現し、「マシンにダメージを受けてしまったのは残念だ。スコット(・テイラー。チームオーナー)、アッシュ(・スワード)、そしてチームはあんな結果に値しなかったが、今日の勝利のために全力を尽くしたと確信している。この週末は本当に楽しかったし、スコットのチームの一員になれる機会を与えてくれたことに感謝している」と振り返った。

 テイラーはこう付け加えた。

「速かったマシンだったので、本当に残念だ。土曜日にポールポジションを獲得し、その功績で特別なトロフィーを手にした。レースの最初の3時間を好位置で走り切ったときは、優勝候補だと確信していたんだ。しかし、残念ながらそれは叶わなかった。最後まで戦い抜いた時、勝利がどれほど難しく、どれほど特別なことなのかを実感した」

メルセデスAMG GT3エボ
スコット・テイラー・モータースポーツのメルセデスAMG GT3エボ

■息子のレースに同行したルーベンスの野望

 ブロンズクラスのディフェンディングチャンピオンとして参戦したハート・オブ・レーシング・バイ・SPSの27号車メルセデスAMGは、レース序盤で不運に見舞われた。2時間目にイアン・ジェームスが後方から追突され、左リヤサスペンションが損傷、7周の走行不能に陥ったのだ。

 このハート・オブ・レーシングから息子のエドゥアルドがレースデビューを果たすのを応援するため、初めてバサースト12時間レースを訪れた元F1ドライバーのルーベンス・バリチェロは、レース中継で、マウント・パノラマにエドゥアルドともうひとりの息子でFIA F3レーサーのフェルナンドとともに、ドライバーとして参戦したいという野望を語った。実現すれば、3人のバリチェロが1台のマシンをドライブすることになるかもしれない。

メルセデスAMG GT3エボ
エドゥアルド・バリチェロもドライブしたハート・オブ・レーシング・バイ・SPSの27号車メルセデスAMG GT3エボ

■観客数記録を更新

 バサーストの3日間の週末の観客数は5万5231人と報告され、2023年の観客数である5万3446人を上回る新記録を樹立した。なお、昨年の観客数は5万1372人だった。

 開幕戦が終了し、IGTCの参加者は5月16日〜17日に開催される第2戦、ニュルブルクリンク24時間レースに向けての準備に意識を移すことになる。このドイツの耐久レースの伝統に先駆けて、今後数カ月間にNLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)のラウンドがいくつか予定されている。

2026バサースト12時間
バサースト12時間レースが行われたマウント・パノラマ・サーキットの様子

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