この前日、土曜のプレ予選の後に行われたメディアのラウンドテーブルで、ロッシは「事前に数多くのテストを重ねていたが、実戦では52台ものGT3マシンが一斉に走行するがゆえにトラフィックの多さやスピードの難しさを感じる」と素直な心境を語った。それらの状況も踏まえてファイトに溢れ、エンジョイしているようだ。また、彼はチームメイトと協力して戦うレースを学ぶことを楽しんでいる。
「MotoGPでは参戦するライダー全員が同じレベルの戦いだが、GTWCヨーロッパではさまざまなレベルのドライバーが混走するうえ、レースでは1台のマシンに携わるクルーの人数も多く、3名一組で走る耐久レースでは3名のドライバーの意見やドライブスタイルを考慮したセットアップの最良ポイントの調整、走行台数の多さ、タイヤの使い方などMotoGPとは違った環境という意味で、よりコンペティティブだ」とコメントし、長年培ったモーターサイクルのレースから離れ、いちから学ぶ楽しさで充実していると笑顔を見せた。
■ピットを行き過ぎるアクシデントで大きくタイムロス
4月に入ったものの、気温がぐっと下がり非常に寒いレースウイークとなった開幕戦の決勝日、サーキットの周辺は公園に囲まれているため、多くの立ち見の観客が訪れ、小さな町の周辺道路は渋滞が続いた。
そんななかスタートを迎えた第1戦イモラでは、ミューラーが46号車アウディのスタートドライバーを担った。第2ドライバーを務めたロッシは、デビュー戦前には欧州内のさまざまなサーキットでテストを重ね、チームメイトたちからアドバイスを貰いながら充分な準備を積んで挑んだデビュー戦だったが、フルコースイエロー(FCY)とセーフティカーランが長く続いたことでピットストップの戦略が大きく乱れることに。
ロッシはFCY中にピットインをすることになったが、直前になってチームが46号車の止まるべきボックス位置を同チーム内のひとつ手前に変更したことにより、従来のピットへ入ろうとしたロッシが戸惑い、通り過ぎてしまった。
ファストレーンで一旦は停止したマシンをメカニックが追いかけたが、後続車が来たためチームはロッシのR8 LMSを引き戻すことができず。彼はさらに1ラップを走行してから再度ピットインしなければならず、大きくタイムを失ってしまう。そんなアクシデントもあり必ずしも思いどおりにはならなかったデビューレースだったが、多くのファンやレース関係者からの盛大な応援を受けて無事に完走を果たしてみせた。
自身のスティントを終えてマシンから降りたロッシには、パートナーのフランチェスカ-ソフィア・ノヴェロさんが駆け寄りキスを交わすなどアツアツぶりが伺え、ロッシの活躍に瞳を輝かせて見届けた。
イモラでのGTWCヨーロッパデビュー戦の1カ月前にはフランチェスカ-ソフィアさんとの間に長女のジュリエッタちゃんが誕生したばかりで幸せに満ち溢れているロッシは、MotoGPで世界中を飛び回っていた生活から、家族との時間を優先にしたいと語った他、自身の出身地で実家のあるタヴリア村に所有するオフロードコースで後進の指導にも力を注いでいる。
ロッシが参戦する次戦第2戦は、4月30日~5月1日にイギリスのブランズハッチで開催される。同イベントはGTWCヨーロッパのスプリントカップ初戦となり耐久シリーズと同様に、アウディ・ワークスドライバーのバービシュとタッグを組む予定だ。


