開幕前に鈴鹿、富士と2回行われたテストでは、昨年の勢力図から変化の兆しが見受けられた。そしてさまざまな要因が相まって、今季はより多くのドライバーが上位を争うものと予想される。

 3月の上旬の鈴鹿公式合同テストで光ったのが、山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)、坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)、山下健太(KONDO RACING)ら、昨年不調にあえいでいたドライバーたちの上位進出だ。

 2020年に3度目のタイトルを獲得した山本は「このシーズンオフにもう一度クルマを見直してもらって走り出したら、かなり上手く走れるようになった」と話しており、昨年の大不振から脱却の兆しを見せている。

 坪井もまた「チーム体制やレース・テストの組み立てをもう一度見つめ直し、イチからやるつもりで」オフの間に準備を進め、「昨年とは少し違ったセルモ・インギングを作り上げられたという手応えを感じている」と、視界良好な様子。

 3月下旬の富士公式合同テストでは、総合トップタイムをサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が奪い、山下と並んでKONDOの好調ぶりをアピール。昨年はコロナ禍の入国規制により2戦しか出場することができなかったフェネストラズだが、オフの間にチーム全体としても大きな向上を果たしてきたようで、昨年のもどかしさを晴らすべく、モチベーションは極めて高い。

 テストのタイムを見る限りKuo VANTELIN TEAM TOM’S勢も復調の兆しを見せており、鈴鹿テストの最終セッションでトップタイムを奪った宮田莉朋は「鈴鹿も富士もわりと上位にいることができたので、あとは開幕戦に向けてアジャストしていきたい」と語っている。

 また、富士テスト2日目午前のセッションでは関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)とまったくの同タイムとなるセッションベストをルーキーの佐藤がマークするなど、新勢力の台頭にも期待がかかる。

 とくにTEAM GOHは、元ホンダF1マネージングディレクターの山本雅史氏が監督を務めるほか、岡田秀樹氏と伊沢拓也がアドバイザーを務めるなど、充実の体制でルーキーふたりをサポートしており、テストでのタイムでもトップチームにさっそく肩を並べていることから、『台風の目』となることも期待される。

2022スーパーフォーミュラ鈴鹿合同テスト 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)
2022スーパーフォーミュラ鈴鹿合同テスト 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)
2022スーパーフォーミュラ富士合同テスト 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)
2022スーパーフォーミュラ富士合同テスト 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)
2022スーパーフォーミュラ富士合同テスト サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)
2022スーパーフォーミュラ富士合同テスト サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)

 一方、これら新興勢力&復調組を迎え撃つ側も、オフの間にそれぞれの課題に向き合い、開幕を迎えようとしている。

 昨年タイトルを獲得した野尻には“王者の貫禄”も感じられる。開幕前最後のテスト機会となる富士でもタイムを追わず、課題解決に集中。最終セッションはニュータイヤを使わずに5番手と悪くないタイムを残し、「ここからどれくらい高いパフォーマンスを出せるのかという部分では、(開幕戦が)楽しみで仕方ない」と言い切っている。

 このほか、昨年ランキング上位に食い込んだ関口や平川、大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)らもそれぞれに課題を抱えながら上位に顔を覗かせる場面はあり、引き続きタイトル戦線の主役となることが期待される。

 開幕前のテストはいずれも寒いコンディションの中での走行となり、全体のタイム差もわずかであることから、レース本番ではさらに異なる勢力図が描かれる可能性もある。レース数も増えるなか、復調組や新勢力の台頭も相まって、今季は多くのドライバーが上位争いを展開、タイトル戦線は“役者ぞろいの混戦模様”となりそうな予感が漂っている。

2022スーパーフォーミュラ鈴鹿合同テスト 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)
2022スーパーフォーミュラ鈴鹿合同テスト 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)
2022スーパーフォーミュラ富士合同テスト 野尻智紀(TEAM MUGEN)
2022スーパーフォーミュラ富士合同テスト 野尻智紀(TEAM MUGEN)

■変更されたリヤタイヤと2レース制の影響は?

 また、今季はヨコハマの供給するタイヤにも変更が加えられ、リヤタイヤの構造(形状)変更が行われた。耐久性の向上を目的とし、ショルダー部分がより丸みを帯びた形状のものが採用されている。

 ヨコハマは「タイヤの特性を変えようという意図はまったくない」としており、変更の影響を感じていないドライバーも多いようだが、一方では影響を体感しているドライバーもいる。

 そのなかには低速コーナーでのトラクションの掛かりづらさなどを指摘する声もあり、これによりタイヤがスライドすることで、主に暑い時期のロングランにおけるリヤのデグラデーションを懸念するドライバーやエンジニアもいる。いち早くこのタイヤを理解し、セットアップを合わせ込むことも、勝利へのカギとなるかもしれない。

形状が変更されたヨコハマのリヤタイヤ
形状が変更されたヨコハマのリヤタイヤ

 1ウイーク2レース制については、どのドライバーも関係者も「調子が良ければ大量得点を狙えるが、走り出しが悪いと厳しくなる」と異口同音に語る。また、開幕前の富士でのテストは初日午前がウエット、さらに午後は降雪により中止と、ドライで走り込めた時間は少ない。

 これらのことから、いきなり2レース制が採用される開幕ラウンド富士の週末は、第1戦予選前唯一の走行機会となる金曜日の専有走行から、各陣営の緊張感は極めて高くなりそうで、目が離せない。

 また、2レース制は開幕のほか、シーズン中盤のモビリティリゾートもてぎ、そして最終ラウンドの鈴鹿サーキットで予定されており、いずれもタイトル争いに向けて非常に重要なイベントとなりそうだ。

■新たな情報発信や、未来に向けた車両開発も実施へ

 冒頭で触れた『スーパーフォーミュラ・ネクスト・ゴー』の取り組みの一環として、今年は新デジタルプラットフォーム『SFgo』が立ち上げられるほか、公式YouTubeチャンネルの強化が図られる。ファンとしては、これらの取り組みよってスーパーフォーミュラの魅力がどのように提供されるのかも、気にかかるところだろう。

 また、もうひとつ未来に向けた大きな動きとしては、「ドライバーズファーストとカーボンニュートラルの実現を目指すクルマづくりの挑戦」を掲げ、2022年シーズンを通じて次世代のフォーミュラカーの開発が行われることになった。

 具体的には各レースイベントの前後に、2台のテストカーでの開発テストを実施。ここでは『カーボンニュートラル実現に向けた素材・タイヤ・燃料の実験』が行われるほか、『ドライバーの力が最大限引き出せるエアロダイナミクスの改善』や『エンターテインメントの魅力向上につながる車両開発』をしていくという。

 この2台のテストドライバーは、石浦宏明と塚越広大が務めることが発表されている。

 2022年のシリーズ展開はもちろんのこと、2023年以降に向けたこれらの取り組みにも、注目が集まる一年となりそうだ。

未来に向けた各種開発を担う2台の開発テスト車両
未来に向けた各種開発を担う2台の開発テスト車両

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