おかげで3人はもちろん、フリーピットを得てポジションを守り、ガスリ―は30ポイントまで広げられたはずの選手権リードを10ポイント差まで詰められてしまった。

「母はずっと入院していたし、ホッケンハイムでもモンツァでもトラブルや壁に遭遇して、いろんなことが僕らの逆風になった。最終戦のアブダビを待たず、USGPという早い段階でトロロッソのドライバーが発表されたのもショックだったし、そこから気持ちを立て直して戦うのは簡単なことじゃなかった。ただただ、強い心を試されたシーズンだったと思う」

 アブダビでたくさんの感情が沸き上がったのは、そんなシーズンを乗り越えたからこそ。逆境に負けず、目標に到達したからだった。プレッシャーをものともせず、レース1で実現したポールポジション‐ファステストラップ‐優勝は、ピエール・ガスリ―というドライバーの精神力を象徴するものでもあった。

「振り返るといい経験を積めた1年だったと思う。シルバーストンはとてもいいレースが戦えたし、スパの優勝も本当に嬉しかった――僕の家からいちばん近い距離にあるのがスパ・フランコルシャンなんだ。だからたくさんの人たちが応援に来てくれたし、勝つことによって彼らにお礼ができて最高の気分だった。8位からスタートしたレース2でもたくさんのオーバーテイクに成功したし、すごく楽しいレースだった。スポーツという面以外で起こったいろんな出来事はけっして僕の助けにはならなかったけれど……チームとはすばらしい関係が築けたし、マシンは常に速さを備えていたし、ポールポジションを5回獲って、レース1で4勝を挙げて、追い上げが必要なレースでは思いきり戦ってオーバーテイクに成功して、スポーツ面ではすごくいいシーズンだったと思う」

 飾り気のない正直な言葉と、柔らかい口調に生まれつきの精神力が表れる。2016年の経験は、そんなドライバーをさらに強くした。いくつもの苛酷な“テスト”に合格して、F1への階段を上りながら、2017年はスーパーフォーミュラという未知の世界に挑む。

第3回につづく

ピエール・ガスリー
GP2タイトルを獲得して今季ホンダの一員となり、スーパーフォーミュラに参戦するガスリー。

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