そんななか、異なった戦略で虎視眈々と事実上のトップを走行していたマシンが存在していた。序盤から2番手を走行していたARTA BMWだ。ライバルマシンがピットインを行なったことで単独走行できるようになると、安定したラップタイムで周回。ライバルマシンがバトルを繰り広げている最中に、じわじわとタイム差を広げることに成功していた。
そして31周目、満を持してARTA M6がピットイン。単独走行でタイムを稼ぎつつ、さらに奥の手としてタイヤ無交換作戦を行いタイムロスを最小限に留める。ピットアウトすると、VivaC 86やLEON AMGに対し、メインストレート一本分近いマージンを築いていた。
GT300クラスの全車がピットインを終えると、首位は単独走行のARTA BMW。VivaC 86とLEON AMG、初音ミク AMGの3台が1秒以内でのバトルを繰り広げながら続き、さらに遅れてGULF NAC PORSCHE 911というトップ5となったが、事実上の優勝争いは上位4台に絞られることとなった。
ピット戦略によりLEON AMGと初音ミク AMGの前で走行するVivaC 86だが、ラップタイムが上がらず、後ろの2台にピタリと追走される苦しい展開。
そして32周目、虎視眈々と2番手の座を狙っていたLEON AMGが、第3コーナーでVivaC 86をオーバーテイク。LEON AMGには余裕があったようで、瞬く間に後続の2台を引き離すことに成功する。
その後もVivaC 86のラップタイムは上がらないものの、タイトルを争う初音ミク AMGも無理に仕掛けるわけにはいかず、2台による3番手争いはこう着状態に。GULF PORSCHEも追いつき、ふたたび3台によるバトルが始まった。
一方、盤石と思われていたARTA BMWの首位走行に、じわじわと近寄るマシンが。同じくブリヂストンタイヤを履きつつも、フロントタイヤを交換したLEON AMGが少しずつその差を縮めてきていた。
このままの順位であればチャンピオンは初音ミク AMGのものとなるため、タイトル獲得の可能性を高めるためにLEON AMGはさらにプッシュ。これに呼応するかのように、初音ミク AMGもVivaC 86を激しく追いかけることとなる。
そして39周目、初音ミク AMGは3番手におどり出ることに成功。タイトル争いをより有利な展開へと持ち込むこととなった。しかし、LEON AMGも最後まで諦めない。
残り周回数が少なくなると、ARTA BMWはタイヤがタレたか、グリップ不足に苦しんでいるようでタイムダウン。一方のLEON AMGの勢いは衰えず、2台は急接近。そしてついにはテール・トゥ・ノーズの展開になる。
そして48周目の1コーナーでLEON AMGがARTA BMWをオーバーテイクし、ついにトップに浮上。チャンピオン獲得へ向けて、できうる限りのポジションを奪取し、チェッカーフラッグを目指した。
そのままLEON AMGがトップでチェッカー。2位にARTA BMWが続き、初音ミク AMGが3位でゴール。3年ぶり3回目のタイトルを獲得することとなった。
4位はGULF PORSCHE、5位VivaC 86と続き、こちらも最終戦までタイトル獲得の可能性を残していたJMS P.MU LMcorsa RC F GT3が6位でゴールした。
グッドスマイル 初音ミク AMGはトップでチェッカーを受けた際、片岡はガッツポーツ。満面の笑顔で片山右京監督と喜びを分かち合った。パルクフェルメに戻ってきた谷口も片岡と強く抱き合ったが、その目には涙が浮かんでいた。
盤石に見えたレース展開だったが、タイヤも含めかなりギリギリ攻めた戦略だったようで、ふたりの顔に、ようやく安堵の表情が見られることとなった。