2021年のスーパーGTでは、GT500クラスに参戦する2台のニッサンGT-RニスモGT500にタイヤを供給するミシュラン。8月21~22日に鈴鹿サーキットで開催された第3戦では、2台ともに予選Q2に進出し、決勝では見事にMOTUL AUTECH GT-Rが優勝、そしてCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rも2位でフィニッシュし、2014年第5戦富士以来のワン・ツーフィニッシュを達成した。
そんな第3戦後、ミシュランで長年スーパーGTタイヤの開発を担当する小田島広明モータースポーツダイレクターに、レースの感想やトップ争い、また今回のタイヤ開発状況などについて話を聞いた。
同じく鈴鹿サーキットで開催された昨年の第6戦以来となる勝利の美酒を味わった小田島氏は、まず「ホッとした」と切り出し、タイヤメーカーとしての胸の内を明かした。
「同一車種の中でのタイヤ競争を、きちんとタイヤメーカーとして戦うということが大前提の中で、今回の鈴鹿は“GT-Rが非常に強いレース”という印象が強かったと思いますが、そのなかにもタイヤメーカーの競争の縮図があります。そこで優位性を示すことができたのかなと思います」
続けて、23号車MOTUL AUTECH GT-Rがソフトタイヤで3番手、3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rがミディアムタイヤで7番手につけた予選については「公式練習と予選から、日曜日の天気を見越して選択肢が別れたところもありますが、どちらも間違っていたかと言うとそうではなく、狙いの部分とドライバーの好みの部分が出ました」と振り返った。
「どちらのスペックを選択しても、優位になる可能性とリスクテイク(危険を承知で行う)をしなくてはいけません。ですが、どちらのチームも選んだタイヤを見るとリスクよりもメリットのほうが大きい、使いこなす自信があるという選択になりました。なので、どちらのスペックもきちんとチームの要望どおり機能したということは、タイヤ供給側としては非常に満足しています」
そんな予選を経て迎えた日曜日の決勝レースは、気温31度、路面温度43度という週末最高気温を記録した。これは予選時と比べると路面温度は10度以上(予選日の気温はQ1開始時27度、路面温度31度)温度が上がっている状態だ。そんな決勝に23号車は第1スティントをソフトで挑むことになったが、小田島氏はタイヤについて「正直ちょっとキツい領域に入るかな」と心配していたという。
「実際は30度ちょっとの温度域でも予選のようにフルプッシュをすると、やっぱりちょっとグニャグニャ感といいますか、剛性不足のようなソフトタイヤのウィークポイントが見え隠れしている状態でした。そのことを松田(次生)選手からフィードバックを受けたロニー(クインタレッリ)選手もその気配を感じたのか、予選ではうまくタイヤをマネジメントしてくれて、きちんと1周をまとめてくれました」
23号車がそのような状況でもソフトを選んだ理由は、予選時の天気予報にあった。
「(予選時の)日曜日の天気予報が『決勝の第1スティントで少し雨がぱらつく』というのがありました。そうなると、そういった状況でもソフトの方が熱的に維持できます。チームがそういった視点でソフトを選んだので、我々としては『そこまで見据えるなら良いのではないか』ということで否定しませんでした」
一方の3号車はミディアムを選択したが、こちらについては「ミディアムのほうがタイムもしっかりと出るしレースペースも安定する。そして温まりについての問題もあまり感じられない」という理由での選択となった。