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スーパーGT ニュース

投稿日: 2021.11.19 00:47
更新日: 2021.11.19 00:48

GOODSMILE RACING & TeamUKYO 2021スーパーGT第7戦もてぎ レースレポート

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スーパーGT | GOODSMILE RACING & TeamUKYO 2021スーパーGT第7戦もてぎ レースレポート

GOODSMILE RACING & TeamUKYO

2021 AUTOBACS SUPER GT Round7 MOTEGI GT 300km RACE

■DATA
会期:2021年11月6日~7日
場所:ツインリンクもてぎ(栃木県)
天候:晴
観客:公式予選6,100人、決勝12,000人、合計18,100人
予選:23位
決勝:リタイヤ
獲得ポイント:0P
シリーズ順位:10位(25P) 

 2021 SUPER GTもいよいよシーズン終盤戦。11月6〜7日に今シーズン2度目の開催となるツインリンクもてぎでシリーズ第7戦がおこなわれた。7月にもてぎで開催された第4戦で4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、予選5番手から5位入賞とポイント獲得を果たしている。

 ここでのMercedes-AMG GT3のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)重量は第6戦に続き45kgのまま。依然としてGT300クラス全車両の中でも最重量級となる1330kgは変わらず。

 またシリーズ恒例のスポーティング規定として、年間の戦績により搭載されてきたサクセスウエイト(=SW/旧称ウエイトハンデ)は、この第7戦では『獲得ポイント×1.5kgで小数点以下切上げ』と半減されるため、前戦の結果により追加されたウェイトを加算しても、60kgから38kgへと軽減される結果となった。

 決して簡単な戦いではないが、過去の戦績だけ見れば、谷口信輝選手と片岡龍也選手、そしてMercedes-AMG GT3にとっては相性の良いサーキットのひとつでもあり、今回も上位でのゴールを期待されていた。

【11月6日(土)】公式練習、公式予選

天候:晴
コース:ドライ
気温/路面温度
Q1開始前(14:15)18℃/29℃
Q2終了時(15:20) 17℃/26℃

 澄んだ青空が広がった土曜午前9時25分からの公式練習は、前回のもてぎ以来5戦連続で走り出しを務める片岡選手のドライブでスタート。気温13℃、路面温度22℃とやや肌寒いコンディションの中、片岡選手はセッション開始と同時にコースへと向かっていく。

 マシンバランスと持ち込んだ2種類のタイヤコンパウンドの感触を確かめながら、計測6周目に1分47秒313をマーク。コントロールライン通過時点で7番手とすると、ピットでの確認を挟んだ10周目には1分47秒170の自己ベストを記録する。

 全車80km/h規制となるFCY(フルコースイエロー)システムのキャリブレーションを経て、午前10時を回ったタイミングで谷口選手がステアリングを引き継ぐ。

 谷口選手はセットアップとタイヤの感触を確かめたのちにロングランへ。日差しが増し路面温度がジリジリ上昇するなか、谷口選手は1分48秒台を軸にコンスタントなラップを重ねる。最終的に18周を走破して再び片岡選手にステアリングを戻した。

 片岡選手はタイヤを替えコースへ復帰すると、そのままGT300クラスの専有走行枠に入り連続周回をこなした。朝とは違うウォームアップ方法を試してみたが、セッション前半に自身が記録したタイムの更新はならず。全体の13番手で走行を終えた。
20分間のFCYテスト走行枠では再び谷口選手が担当し予選に向けての最後のチェックを済ませた。

 午後の公式予選。今回は前戦のアクシデントの影響で1台が欠場したため、全28台による組み分け方式が採用され、4号車はQ1B組での出走に。チームは午前の感触から苦戦が予想されるQ1突破を、もてぎマイスターの片岡選手に託した。

 午後2時38分。Q1B組のピット出口オープンと同時に、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGと片岡選手はコースへと向かった。29℃まで上昇した路面温度の変化も確かめつつ、アウトラップから計測2周分熱を入れ、ここから連続アタックへ。

 まず4周目に1分47秒468として計測時点で3番手に立つと、続くラップでは1分47秒260へとタイムアップ。しかしライバル勢のタイム上昇幅には届かず、Q1B組では12番手に終わり、Q2進出はならなかった。A組との合算で、翌日の決勝では23番グリッドからのスタートとなった。

片岡龍也と河野高男エンジニア
片岡龍也と河野高男エンジニア

【11月7日(土)】決勝

天候:晴
コース:ドライ
気温/路面温度
スタート前(12:55):19℃/29℃
中盤(13:55):20℃/30℃
終盤(14:30):19℃/27℃
終了(15:00):18℃/25℃

 前日に続き快晴となった日曜のサーキット。人数制限はあるものの、サーキットには多くの観客が詰めかけた。ドライバーアピアランスを経て20分間のウォームアップ走行を前に、もてぎ戦名物とも言える航空自衛隊松島基地所属『F2-B』の歓迎フライトが実施され、決勝レースに向けてサーキットのボルテージが高まっていく。

 ツインリンクもてぎのコースレイアウトはストップ・アンド・ゴーが多いことで知られ、ブレーキに厳しいサーキットである。また燃費にも厳しく、ピット作業での給油時間を短縮するべくガソリン消費量を極力抑える為、ドライバー側のマネジメント技術も試される。そうした前提もあり、”オーバーテイクが難しい”サーキットに分類されるもてぎでは、ドライバー義務周回となる全体の3分の1の走行規定距離を消化した時点でピットイン。セカンドスティントを長く取り、コース上のクリーンな場所でラップタイムを稼ぐ”ミニマム”の戦略が定石となる。

 しかし、予選23番手と後方グリッドからの勝負となってしまったGOODSMILE RACING & TeamUKYOはセオリー通りの作戦以外も選択肢にいれつつ決勝へと臨んだ。直前のウォームアップ走行で10周を走破して感触を確かめた片岡選手は「なんとかポイント圏内へ」を目標にグリッドに向かった。

 午後1時、決勝スタート。気温19℃ながら路温は30℃まで上昇していた。オープニングラップのバトルでは、ローリングスタートからの駆け引きに秀でる片岡選手が、まずは前方22番グリッドにいた6号車(Team LeMans Audi R8 LMS)を3コーナーでイン側に飛び込み仕留める。続くラップの4コーナーでは7号車(Studie PLUS BMW)をかわし、2周目に21番手に浮上する。

 その後、ポールシッターだった18号車(UPGARAGE NSX GT3)がトラブルで戦列を去り20番手とすると、3周目から背後に付かれた360号車(RUNUP RIVAUX GT-R)に対し、文字どおり”コンタクト上等”の肉弾戦を繰り広げた。

 FIA-GT3車両の中で飛び抜けた強さを誇り、ターボの過給によりコーナー脱出から中間加速で異次元の速さを見せるNISSAN GT-R NISMO GT3は「もうあまりの性能差に……戦うのがバカらしくなる」過酷な状況ながら、片岡選手は直線速度ではまったく勝負の出来ないMercedes-AMG GT3をなんとか操り、必死のディフェンスを続けていく。

 そんな状態でGT500車両とのオーバーラップが始まった9周目には、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGの目前にいた65号車(LEON PYRAMID AMG)が、ヘアピンで押し出される形でコースオフ。グラベルで停まり、車両回収の為、FCYが導入される。FCYからのリスタートの加速で52号車(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)を出し抜き、混戦のなかで「こちらも500車両と絡んでブツけられたりしながら」18番手までポジションを回復する。

 そして迎えた13周目。「前を行く87号車(グランシード ランボルギーニ GT3)を追いながら、ペースダウンしていた2号車(muta Racing Lotus MC)に追いついた」片岡選手は、その2台が競り合い、2コーナー立ち上がりでわずかに加速が鈍ったのを見逃さなかった。

 3コーナーまでのストレートでサイド・バイ・サイドの状況を続けながら、コース中央からアウト側へと並走した2台のイン側に、片岡選手はスペースを見つける。

「正直、入る時点で『イチかバチかだな』っていう追い抜きは、普段だったら絶対にやらない。いつもならクルマをゴールまで運ぶということを絶対的プライオリティにしているものを、今回だけはリスクコントロールを大幅にリスクの方に振ったら、やはり感覚は正しかった。87号車に対しては申し訳なかったし、端的に言えば僕の完全なジャッジミス。でも現状のクルマはその覚悟でいかないと、絶対に加速で離れて追い越せないんです」

 そう片岡選手が振り返るようにブレーキングからターンインで2号車を刺したものの、アウト側にいた87号車に接触し、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは右フロントを破損。先の5コーナーまでスロー走行し、安全な場所まで運んでマシンを止めることとなった。

 2012年に谷口選手と片岡選手がコンビを組んで以降、SUPER GTでは初の接触リタイヤとなったGOODSMILE RACING & TeamUKYO。厳しかった2021年シーズンを象徴するようなラウンドとなったが、この悔しさが”ノーウエイト”の最終戦で晴らせるよう、今後もあらゆる領域で準備を進めていく。

谷口信輝と片岡龍也
谷口信輝と片岡龍也

■チーム関係者コメント
安藝貴範代表
今回は少しタイヤチョイスの面でグレイニングを恐れすぎた……と言いますか。選ぶべきものを選んでたら優勝すらあったな、っていう気がしています。優勝したクルマの活躍や、他チームの走りを見ていると、タイヤをきちんと選択出来ていれば悪くない位置には確実に行けたんだろうな、と。ヨコハマタイヤには良いところもありますし、チョイスも無限にあるわけですから。僕ら側のテクノロジーで、もう少し高精度な分析手法を導入することで、タイヤメーカー側にも僕らからのサジェスチョンをもっと強くできるようになりたいですね。お互い進歩がないといけませんし、ライバル車を含めレース全体を俯瞰して、全体のパフォーマンスを比べられるように、次回からニューシステムを投入しますよ。BoPにもタイヤ開発にも良い影響を出せるんじゃないかな。

片山右京監督
本当に今季は積み上げがないですね。今回は持ち込みのタイヤから少しハズした感があり、予選でも硬い側を選択せざるをえない状況になり。決勝でも硬い側でペースを上げられないから、良いところが出せないですよね。でも、そういう点を含めて、蓄積してくしかないんですよ。そして最後の決定打は……ストレートスピードの遅さなんです(涙)。もう少しストレートの速度があれば、それだけで戦略に幅が出る。あとはピット作業の見直しとか、いろいろやらなくちゃいけない課題はあるんですが、レギュレーションと性能調整の面で厳しすぎて、とにかく「予選を通らなきゃいけない!」ってところに意識が行き過ぎると……戦略もなにもないですよね。チームも、タイヤメーカーも、お互いにデータと蓄積を確認し、バックアップしながら共有して進んでいかないとダメですね。

谷口信輝選手
今回は……なんて言うんでしょうね(苦笑)。やはり性能調整的な部分で、その厳しさというか、現状のGT300の足並みの”不揃い感”は否めないと僕たちは思ってます。負け犬の遠吠えにしか聞こえないかもしれないけれど、メルセデス全体が下位に沈んでいる。とはいえ、僕たちが今できる全部、100点満点の「これ以上はねえ!」って準備が出来ているのかって言われたら、それも足りてなくて。改善すべき点は明らかにあるし、とにかく今はこのBoPからくるプレッシャーと、悪循環のループに入っている。周囲からは、ここ数戦なんだか『GSRっぽさが復活してきている』ように見えたかもしれませんが、基本的には弱者のレースしか出来ていないし、なんとか流れを変えたいなと思います。

片岡龍也選手
今回も予選から厳しい状況で、レースも「なんとか頑張ろう」って思いでスタートしたんですが、周囲のクルマに対して徹底的に閉めるか、コース幅いっぱいギリギリ以上を使うか、とにかく何らかの策を弄していないとマトモには勝負できない。コースの外に押し出されたり、軽い接触なんかもありつつ、500の車両とも絡みながら戦っていたんですが、あまりに手がなさすぎて。経験があり、普段はそのリスクを抑えているわけですが……みんなには申し訳なかったです。多分、これがもっと長いレースになれば、さらにメルセデスの良さが出ると思うんですが、300kmの距離で現在の性能調整だと本当にキツい。今はなにひとつ優位性を持っておらず、そういう状況下でしかレースが出来てないっていう悪循環が出てしまいました。

片山右京監督
片山右京監督


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