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スーパーGT ニュース

投稿日: 2022.04.30 16:32
更新日: 2022.05.02 10:55

「ヨコハマのMRが速い」裏付けと、オフに“飛躍”したダンロップ。富士450kmで勢力図は変わるか【GT300タイヤ開発最前線】

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スーパーGT | 「ヨコハマのMRが速い」裏付けと、オフに“飛躍”したダンロップ。富士450kmで勢力図は変わるか【GT300タイヤ開発最前線】

 2020年はヨコハマ、2021年はダンロップがシリーズを制すなか、昨年は2勝にとどまったブリヂストン。ヨコハマ、ダンロップがタイヤ開発に力を入れてポテンシャルを伸ばすなか、やや苦しんでいる印象も受ける。

 ブリヂストンはここ数年、GT500と同レベルのタイヤ開発はGT300で行っておらず、「正直、リソースもそこまでかけられるわけではないので、『GT500の技術をうまくGT300に転用して効率よく』というスタンスは今年も変わらないです」と開発を指揮する山本貴彦氏はいう。

「ただそのなかでウチは“頭打ち感”といいますか、とくに無交換が(ブルテンや特別規則書で)禁止になったときの、一発の速さの面とかが課題かなと思っています。車種がいろいろあって難しいのですが……」

 山本氏によれば、「ちょこちょこと(開発は)やってはいるのですが、なかなかいいところが見つけられていない」という。GT500で良かった方向を単純にGT300に転用しても結果が出ないなど、開発効率と性能向上を天秤にかける、悩ましい時期が続いているようだ。

 ただし、取材後の第1戦決勝ではLEON PYRAMID AMGが早めのピットインでアンダーカットを成功させ、安定した走りを見せ3位に。予選で下位に沈んだARTA NSX GT3も、アクシデントを引き起こすまでは追い上げを見せていたことから、とくに決勝レースでの強さは引き続き武器となっているようだ。

 来る第2戦富士の450kmレースは、4月21日にGTAが発行したブルテンによればタイヤ交換義務はない(決勝スタート後、『最低2回の給油』のみ義務付けられている。持ち込みタイヤは1セット追加の7セット)。よって、2回のピットストップのうち1回は、タイヤ無交換や2輪交換という作戦を採用するチームが出てくることが想定される。

 過去を振り返ってみても、無交換や2輪交換といったタイヤのライフを武器にした戦略は、ブリヂストンの“お家芸”と言える。年間3戦が予定されている450kmフォーマットでブリヂストン勢が戦略を絡めた強さを発揮するとなれば、近年とは異なったシリーズ争いが展開される可能性もあるだろう。

2022スーパーGT第1戦岡山 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)
2022スーパーGT第1戦岡山 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)

■「2年前より、スペックの選択肢を増やした」ミシュラン

 最後に、2年ぶりにGT300クラスへと復帰したミシュランの動向を見ておこう。今季はStudie BMW M4の1台のみにタイヤを供給、今年世界的デビューを飾ったBMWの新型GT3車両 M4 GT3との組み合わせが注目されるなか、開幕戦の予選ではいきなり7番手に食い込む速さを見せた。

 決勝後半には一時“渋滞の先頭”となるなど、苦しい場面も見られたが、上位を争うポテンシャルは充分にあるように感じられた。

 ミシュランの2020年のGT300への供給は、本来2021年からと計画していたものを、チーム側からの要望で前倒しした形だった。さらにそこへ新型コロナウイルスの影響が直撃、テストもままならないなか迎えたシーズンでは、思うような成績を残すことができなかった。

 今季のGT300へのタイヤ供給は、2020年とは少し状況が異なるようだ。開幕戦後、オートスポーツwebの取材に対し、小田島広明氏はこう答えている。

「2020年の参戦の際とコンセプトは変わっておらず、GT500のように毎レース専用開発のタイヤを投入するというよりは、我々の持っているスペックと技術のなかから合うものを選択していき、シーズンを回すというやり方です」

「ただ、2年前のときよりは、スペックの選択も少し増やして対応できるようになりました。また、事前のテストも充分には走り込めていないですが、シミュレーションも含めBMWモータースポーツの協力も得られていますので、スタートの時点では2020年よりは準備を進められたと思います」

 周囲のチームも「今年のミシュランは2年前とは違うはず」「高負荷サーキットに行けば、より強い」「アウグスト・ファーフスは、GT300のトップドライバーよりコンマ5秒は速い」と充実の体制に警戒感を強めている。

 開幕戦について小田島氏は、「ドライに関してはちゃんと走るのが岡山のレースウイークが初めてみたいなものでしたので、マッチング自体は大外れではなかったのですが、それぞれのスティントの後半のデグラデーションは『やっぱりな』といいますか、勉強不足のところが出てしまった」と振り返る。

「ただ、何もないところから選んでいただいたタイヤとしては最低限の仕事はできていますし、理解度が深まった分、ここから進歩はできるかなと思います」

“復帰初戦”として充分なパフォーマンスを見せたBMW M4 GT3とミシュラン。今後も上位進出となれば、また新しい“キャラクター”がタイトル争いに名乗りを挙げることにもなる。

2022スーパーGT第1戦岡山 Studie BMW M4(荒聖治/アウグスト・ファーフス)
2022スーパーGT第1戦岡山 Studie BMW M4(荒聖治/アウグスト・ファーフス)

 前述のとおり、来る第2戦富士450kmレースでは各陣営の戦略判断が分かれ、開幕戦とは異なった勢力図となることも予想される。

 果たして、開幕戦で強さを見せたヨコハマの天下は続くのか。ダンロップは一発のみならず、決勝ペースを改善することができるのか。ブリヂストンはどんなレース戦略を採ってくるのか。ミシュランはどの位置に飛び込んでくるのか。GT300クラスでも、タイヤの開発競争とそれを踏まえた戦い方から、目が離せない。


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