更新日: 2022.08.15 12:23
apr GR86 GT 2022スーパーGT第4戦富士 レースレポート
2022 AUTOBACS SUPER GT Round 4 FUJI GT 100Laps RACE
開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km
8月6日(予選)天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:18,600人
8月7日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:29,300人
3ピットを強いられ、あと一歩のところで
入賞逃すも、多くの糧を得た富士大会
スーパーGTはシリーズ中盤戦に突入し、富士スピードウェイで第4戦『FUJI GT 100Laps RACE』が開催された。
2台体制を採るaprは、1台をトヨタGR86に改め、『apr GR86 GT』として不動のコンビ、永井宏明選手と織戸学選手に託して参戦し、タイヤは信頼のヨコハマタイヤを使用する。
今回は100周、450kmを超える長丁場で第3ドライバーの追加も可能であることから、第2戦に続いて全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権に参戦中の平良響選手を起用する。今年は総じてGTA-GT300車両2UR V8エンジン搭載車8台にとって、苦難のシーズンとなっている。ここまでの3戦で表彰台を一度も許されず、厳しいBOPによってポテンシャルを封じ込まれているからだ。
『apr GR86 GT』も第2戦まで苦戦を余儀なくされていた。だが、大きなトラブルもなく、レースでは予選よりも順位を上げてゴールしていたのは、何よりマシン素性の良さを示してもいた。厳しい状況においても、絶えず手を変え、品を変えてマシンを鍛え上げてきたことで、
前回の鈴鹿大会では、予選で初めてQ1を突破したばかりか、Q2で永井選手が4番手を獲得! 決勝では最終ラップに順位を落としはしたものの、8位でゴールしてポイント獲得を果たしたのだ。もちろん、この結果にまだまだ満足するわけにはいかない。さらなる進化を重ね、さらに順位を上げていくことを目標とする。真夏の富士、しかも長距離レースで、どんなレースを見せてくれるのか、大いに注目される。
公式練習 8月6日(土)9:00〜10:35
土曜日早朝の富士スピードウェイは、茹だるような暑さからは解放された一方で、あいにくの濃い霧にコースは包まれていた。幸い、開始直前になって霧は晴れるも、路面は未明に降った雨で濡れたまま。そこでコンディションの回復を待つこととし、『apr GR86 GT』はしばしピットで待機。
30分ほど経過したところで、ようやく織戸選手が走り出す。もちろん装着していたのはドライタイヤだ。
計測2周目には1分38秒674を記録し、その時点でのトップに立って前回からの好調ぶりを強くアピール。スピードは確認されたことから、早い段階で永井選手に交代し、マイレージを稼いでもらう中、最後のアタックモードでの走行では1分38秒792さえ記していた。公式練習ラストのクラス単独セッションで、再び織戸選手が乗り込むと、さらに自己ベストを更新する1分37秒942で12番手につける。
どうやら『apr GR86 GT』が初めて積んだ、サクセスウエイト9kgの影響はほとんどなさそうだ。
この後にFCYテスト、そして久々にサーキットサファリが実施された。この2セッションは平良選手と永井選手が走行。サファリのラスト、バスが離れたタイミングでは、平良選手が1分38秒513をマークし、さすが伸び盛りのドライバーと感嘆させた。
公式予選Q1 8月6日(土)15:00〜15:15
公式予選開始時の気温は21度、路面温度は28度と、公式練習とほぼ変わらず。時間の経過とともに、もっと上がることが予想されていただけに、少々拍子抜けの感も。
今回、『apr GR86 GT』はQ1をA組で走り、織戸選手の担当となっていた。低い温度に対処すべく、久々にウォームアップは入念に行われ、計測3周目からアタックを開始する。
まず記されたのは1分37秒741で、公式練習で記録されたタイムをわずかに縮めただけで、しかも、その時点での9番手。もうひと伸びが欲しいところだ。
続けてのアタックで織戸選手はタイムを詰めたが、1分37秒520に留まってしまい、11番手に。2戦連続のQ1突破は果たせなかった。
永井宏明選手
「セットアップをやる中で、ちょっと外しちゃったなというのが原因だと思います。ただ、決勝では修正できると思うので、必ず追い上げていきます」
織戸学選手
「ちょっと予選に対してのセットを外しました。トラブルでタイムが出なかった訳では無いので明日に向けて修正します。決勝に向けた作戦は、これから決めるところですが、入賞は狙えそうなパフォーマンスは有りそうです」
平良響選手
「徐々に車にも慣れてきて、自分と車のマッチングが徐々に進んでいると感じています。前回は乗れなかったので、今回は決勝も乗って、いい活躍ができればと思います」
金曽裕人監督
「公式練習では、持ち込みのシャシセットも決まっていて良かったんですが、予選で入れたセットが裏目に出てしまいました。前向きに進めた事が失敗につながってしまったということで、焦らずもっと落ち着いてやれば良かったです。積極的にやったことが仇になってしまいましたが、原因は分かっているので決勝に向けて不安はありません。元に戻しましたから。追い上げに、ご期待ください」
決勝レース(100周) 8月7日(日)14:00〜
今回の決勝は、給油の義務づけが2回。その一方でタイヤ交換やドライバー交代に関しては制約がないため、長丁場ならではの作戦の駆使も、順位に影響を及ぼす可能性もあった。決勝前に行われたウォームアップには永井選手から走り始めて、まずは1分40秒757をマーク。後半は織戸選手が走行し、1分39秒305で10番手につける。本来のポテンシャルを取り戻したのは、間違いなさそうだ。なお、今回もスタートを担当するのは永井選手である。
そのウォームアップの直後に天候の変化が……。マシンがグリッドに並べられる直前に、大粒の雨が突然降ってきて、路面をあっという間に濡らしてしまったのだ。
グリッドにはウェットタイヤも持ち込まれて、慌ただしさが増すも、結局どのチームもタイヤを交換せず。雨はすぐにやんでしまったからだ。
それどころか、上空の一部には雲の切れ間も見え始め……。久々にフォーメイションアップの前に県警のパレードランが実施されたが、その頃にはもう完全に晴れ間が広がっていた。
路面が一度濡れたということで、エキストラフォーメイションラップが追加され、レースは1周減とされる。また気温は27度まで上昇、路面温度も31度と、ようやく30度を超えることとなった。
19番手からスタートを切った永井選手は、ダッシュも鋭くオープニングラップのうちに16番手に浮上。早くも1回目の給油を行う車両も2台現れた。しばらくポジションキープで、永井選手は周回を重ねていく。
そして、『apr GR86 GT』も早めにカードを切っていく。20周目には早くもピットに呼び込み、織戸選手への交代を行ったのだ。この間に、順位を落としこそしたが、先にピットに入っていた車両の多くは従えただけに、狙いは的中したことになる。ところが、タイヤを換えなかったことが裏目に出て、織戸選手もやがて思うようにペースを上げられなくなってしまう。そこでやむなく34周目に『apr GR86 GT』をピットに戻すことに。残り周回は、平良選手に託された。
それから10周後に2回目のピットを済ませた、『apr GR SPORT PRIUS GT』とランデブー走行を繰り広げる様子は、まさに映えていた。そして、やがて12番手を走行するまでに。
このままならW入賞も夢ではなさそう。そんな思いも浮かぶようになるも、ロングスティントに対して、燃料とタイヤが持たないもしれないという問題が発生。必死にマネージメントして走っていた平良選手だったが、チェッカーを受けられなければ元も子もない。74周目に緊急ピットインし給油とタイヤ交換。
これで16番手に後退するが、元気を取り戻した平良選手は、その後もプッシュを重ねて83周目には、ひとつポジションをアップ。『apr GR86 GT』は15位でゴールした。
期待された連続入賞にはならず、無念の残る週末にはなってしまったが、次のレースは3週間後に鈴鹿サーキットで、引き続き450kmレースとして競われる。チームのホームコースで、きっと2回目の入賞を果たしてくれるに違いない。また、平良選手も第3ドライバーとして、また貴重な戦力となってくれるはずだ。
永井宏明選手
「シャシバランスは良く、安定していたのでタイヤ無交換で織戸選手も行けそうとチームに伝えました。その時点では、織戸選手の急激なグリップダウンは想像できなかったです。残念ですが、ピット回数も増えてしまったので入賞には届きませんでした。今後は、GR86に合わせたタイヤテストをもっとやりたいですね。次も450kmレースなので、その手探りの部分が少し不安ですが地元レースなので全力尽くします」
織戸学選手
「なかなか厳しいレース内容だったので、15番手で走り切れただけで価値ありでした。三重県からたくさんのスタッフの皆様が応援に来てくださったので、良い走りを、もっとお見せするはずでしたが、今回はできませんでした。次戦の鈴鹿は地元レース、GR86も相性が良いので、スタッフの皆様とTEAM全員で、全開で駆け抜けたいと思います」
平良響選手
「GR86 GT300で決勝を走るのは初めてでしたが、自分のスティントはすごく長いのが分かっていたので、タイヤを温存しながら走っていました。それでも最後、タイヤと燃料が持たないということで、また入らなければならなかったので、速さだけでは入賞は厳しかったです。でも、自分なりにベストは尽くせたと思っていて、次の鈴鹿でも、しっかりチームに貢献したいです」
金曽裕人監督
「昨日の路面状況に合うタイヤは、今日に対しては厳しかったですね。それまでロングランをかけていないタイヤだったので、ドライバーの皆さんには未知数のチャレンジをしてもらうことになり、結果的に失敗だったかもしれませんが、大切なデーターは取れたかと思います。次戦は、前回予選4番手、決勝8位入賞を果たした相性の良いホームコース鈴鹿で、このバックデーターを必ず役に立て#30号車の過去最上位を狙いたいと思います」