■なぜバイクにダウンフォースが必要になったのか?

 ちなみに、なぜ2016年にウイングレットが大流行したのか。これにはふたつの理由がある。ひとつは、MotoGPで使われるワンメイクタイヤのメーカーがブリヂストンからミシュランに代わったこと。そしてもうひとつは、ウイリーを抑止することだ。

 まず、タイヤの話。2015年までタイヤサプライヤーを務めたブリヂストンタイヤは、特にフロントタイヤのデキが素晴らしく、MotoGPライダーは安心し切って「フロント任せ」の走りをしていた。

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2016年からタイヤサプライヤーとなったミシュラン

 ところが2016年からタイヤサプライヤーがミシュランに代わった途端、各ライダーは「グリップが足りない!」と、一斉にフロントタイヤへの不満を訴えた。そして実際に、テストやレース中にフロントからパタパタと転ぶライダーが多くいた。

 開発ライダーであるワタシからしても、確かにフロントタイヤのグリップはブリヂストンより減ったように感じた。でもその差はわずか。「問題の根っこはそこじゃないな」と思った。

 ミシュランは、リヤタイヤのグリップレベルがかなり高い。だから相対的にフロントに不満を感じてしまうのだ。……まずこのことを覚えておいていただきたい。

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フロントが浮く状態

 そして、ウイリーの話。最近のMotoGPは開発コスト削減や安全性確保のために、ギチギチに厳しい制約が課せられている。エンジンでいえば、燃料タンク容量が最大22リットルと決められているため燃費に相当な配慮をしなければならず(MotoGPマシンの燃費はおおよそ5km/リットル前後。これって市販スーパースポーツマシンでサーキット走行した時と同等レベルか、より低燃費なぐらいだ!)、なおかつシーズン通しての使用基数が定められているため、信頼性も高めなければいけない。

 つまり、闇雲にパワーを追求できないようになっているのだ。

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