1965年にデビューした125ccの5気筒マシン『RC148』は、同時期に開発されていた2気筒50ccのエンジン寸法を共有しており、250ccよりも数オクターブ上の甲高いノイズを出した。さらにこのエンジンは20,000回転以上で最高出力を出すことができた。一方でライダーには8速のギヤボックスで音楽を奏でるような、高いスキルが必要とされた。

 5気筒125ccと2気筒50ccのエンジン内部は双方とも非常に小さく、メカニックはピンセットを使用してバルブコッターと砥石でタペットを研磨し、わずか0.1778mmのバルブ寸法に合わせており、設定作業も非常に時間がかかった。

 1965年までにホンダは50cc、125cc、250cc、350ccのカテゴリーを制覇した。ホンダに残された最後のひとつの目標、それは最高峰のロードレース世界選手権500ccクラスだった。

 1966年に参戦したホンダ初の500ccクラスのマシン『RC181』は、他のクラスのホンダエンジンと比べるとシンプルな作りの空冷4気筒エンジンを搭載していた。ところが、見た目とは裏腹にこのエンジンは85馬力ものパワーを発揮しすぐに勝利を収めたのだ。開幕戦の西ドイツGPでは、ローデシア出身のライダーであるジム・レッドマンの乗るRC181は、圧倒的勝利をものにしたのだ。

 レッドマンは2戦目のアッセンでも優勝し、ホンダは500ccクラス参戦の初年度でライダーズタイトルを獲得できた可能性があった。しかしレッドマンは3戦目に超高速のスパ・フランコルシャンの市街地コースでクラッシュを喫し、キャリアを終わらせることになる重傷を負ってしまった。250ccクラスと350ccクラスに集中していたマイク・ヘイルウッドがレッドマンのバイクを引き継ぎ、500ccクラスのシーズン全9戦のうち残りの5戦に出場した。ヘイルウッドは3勝したが、ライダーズタイトルを取るには十分ではなかった。

 しかし、レッドマンとヘイルウッドが達成した5回の優勝によって、ホンダは初参戦にして500ccクラスのコンストラクターズタイトルを獲得した。これによりホンダは世界選手権のコンストラクターズタイトルを50cc、125cc、250cc、350cc、500ccのすべてのカテゴリーで獲得したことになる。これは他のどのマニュファクチャラーも達成したことがない記録だ。

■ホンダの黄金時代が終焉

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