テルエルGPを終え、2020年シーズンのMotoGPも残すところあと3戦となった。バレンシアで行われるヨーロッパGP、バレンシアGP、そして最終戦ポルトガルGPである。すでにシーズンも終盤。例年ならばチャンピオンシップを争うライダーが絞られているはずだ。
しかし2020年シーズンはいまだ流動的な状況だと言っていい。第12戦テルエルGPまでを終え、ランキングトップは、テルエルGPで2戦連続の3位表彰台を獲得したミル。スズキとしては20年ぶりのポイントリーダーとなっている。ちなみにチーム・スズキ・エクスターは現在、チームランキングのトップだ。
ミルから14ポイント差で2番手にクアルタラロ、さらに19ポイント差で3番手にビニャーレスが続き、そしてテルエルGPで今季2勝目を挙げたモルビデリが、トップから25ポイント差の4番手に浮上。一方、アラゴンの2連戦でまったく奮わなかったアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)は5番手に後退した。
ひとつ、エピソードを紹介してみよう。テルエルGPの予選後の会見で、あるジャーナリストが、モルビデリとリンスはチャンピオンシップを争っていないので「テルエルGPの決勝レースではチームメイトを助けるのか」と質問した。するとモルビデリは「どうして僕が、チャンピオンシップを争っていないんだ?」と返したのである。このときモルビデリはトップから34ポイント差のランキング6番手だった。
そして決勝レースでモルビデリは優勝し、ランキング4番手になった。決勝レース後の会見では、モルビデリ自身のタイトル争いについて質問が飛んだのだった。2020年シーズンのチャンピオンシップを表すような、ひとつのエピソードだ。
ここで、テルエルGP決勝レース後、チャンピオンシップ上位4番手のライダーのコメントをまとめた。
ジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)
「(今後は)今まで以上にミスが響いてくると思う。僕たちは速くもいないといけないけれど、速く走ろうとするときにはミスをする可能性、リスクがつきまとう。たとえば、1周目みたいなときには、僕はまったくチャンピオンシップを考えていないよ。でも、たぶん、そうだね、考えるときもある。妥協点を見つけるということだね」
ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)
「テルエルGPでは、先週と同じ結果にならず、14ポイント差でいられたのはよかった。残り3レースで、バレンシアは2戦。昨年はとてもバイクのフィーリングがよかった。ポルティマオでもこのフィーリングを持っていけると思う。ポルティマオは過去、僕が大好きだったサーキットだ。MotoGPバイクでのフィーリングが楽しみだ」
マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)
「最終的な目標はタイトルを獲得することだけど、この安定しないリザルト、バイクのフィーリングでは難しいだろう。すごくすごく厳しい。たくさんミスをしているし、技術的な観点からしてもそうだ」
フランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)
「MotoGPのチャンピオンシップで4番手。すごいことだ。僕が小さい頃に夢見ていたことだよ。素晴らしいシチュエーションだ。でも、戦っているときには、いつも僕は攻めるだろう。シーズンの序盤には、特に考えていなかった。予測をするのが好きじゃないからね。コースで全力を尽くした結果を見るのが好きなんだ」
さらに付け加えれば、残り3戦のどこかで、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が復帰してきたら……。繰り返すが、すでにシーズンは終盤だ。しかし、先の読めないチャンピオンシップは続いている。