組み合わされるトランスミッションは6速ATのみ。スムーズでも洗練されているわけでもないが、とにかくエンジンのパワーを活かそうとする。
エコ指向なクルマのように、あっという間にトップギヤという設定ではなく、低いギヤでホールドしようとする。そして、一度シフトアップすると、速度が下がっても簡単にはシフトダウンしない。欧州の古いAT車そのものだが、エンジンの特性とマッチしているし、明確にスロットルペダルを踏み込めばキックダウンは素早い。
サスペンションはソフトな印象で、分かりやすく言えばフワッとしている。ただ、ダンピングはしっかりと効いていて、ロール剛性も充分にある。
つまり、乗り心地がいい。ステアリングやペダルの操作にクルマ全体が反応してくれて、まさにクルマを操る形だ。
スポーティなクルマは大抵、ロール剛性が高く、ダンピングも強くて、姿勢変化が少ない。C3はそういうレベルにはないが、ステアリングとペダルを使って、スポーティに運転することを存分に楽しめる。姿勢変化は大きいが、ドライバーが制御しようと思えば、それもまた楽しみにつながる。
普通に走らせていてもターボが効いてしまうため実燃費は良くはないし、元気のいい分だけエンジンの振動が強い。また、プラットフォームが古いのか、運動性能は高くない。
それでも、斬新なデザインのコンパクトなボディは充分実用的で、荷室も最低限は確保されている。もちろん、リヤシートの乗員に乗り心地で文句を言われることもないはずだ。
増殖し過ぎたミニのような、これ見よがしなデザインではなく、押しつけがましい雰囲気もない。
モータースポーツのイメージは受け継いでない。しかし、基礎体力というか、体幹というか、あるいは愉しさというべきか……そういったスポーティな要素を、C3はしっかりと持っている。
冷静に考えればホンダ・ヴェゼルRSのほうがほぼすべての面で優れているが、C3の持つ雰囲気を楽しめる方なら、充分に“スポーティ”を味わえる魅力的なコンパクトカーである。
■シトロエン C3 主要諸元
| 車体 | |
|---|---|
| 車名型式 | ABA-B6HN01 |
| 全長×全幅×全高 | 3995mm×1750mm×1495mm |
| ホイールベース | 2535mm |
| トレッド 前/後 | 1480mm/1480mm |
| 最低地上高 | 160mm |
| 車両重量 | 1160kg |
| 乗車定員 | 5名 |
| 駆動方式 | FWD |
| トランスミッション | 6速AT |
| ステアリング | ラック&ピニオン/電動パワーステアリング |
| サスペンション前/後 | マクファーソンストラット/トーションビーム |
| ブレーキ 前/後 | ベンチレーテッドディスク/ディスク |
| タイヤサイズ | 205/55R16 |
| エンジン | |
| 型式 | HN01 |
| 形式 | 直列3気筒DOHCターボ |
| 排気量 | 1199cc |
| 内径×行程 | 75.0mm×90.5mm |
| 圧縮比 | 10.5 |
| 最高出力 | 81kW(110ps)/5500rpm |
| 最大トルク | 205Nm/1500rpm |
| 使用燃料 | プレミアムガソリン |
| タンク容量 | 45L |
auto sport 2019年11月1日号 No.1517より転載
