■『Audi RS e-tron GT』の速さは加速のみにあらず、ブレーキ性能の高さにあり

 試乗車の『Audi RS e-tron GT』は、この21インチホイールを装着していた。前衛的な形状をしたスポークの隙間から、オプションのタングステンカーバイドコーティングを施した鋳鉄製の大径ブレーキディスクと、カラードブレーキキャリパー(レッド)が覗いていた。タングステンカーバイドコーティングは、いかにもEVらしい設定だ。

『Audi RS e-tron GT』は標準で20インチを装着。試乗車(写真)はオプションの21インチを奢る。
『Audi RS e-tron GT』は標準で20インチを装着。試乗車(写真)はオプションの21インチを奢る。

 Audi e-tron GT系は、走行用モーターが備える発電時の抵抗を減速時に利用することで、減速Gが0.3Gまでの範囲なら油圧(摩擦)ブレーキの力を借りず、モーターの回生力だけで減速しまう。つまり、通常走行時のほとんどのシーンで、油圧ブレーキが働くことはない。

 働かせずに放っておかれると錆が浮きがちになるが、その錆の発生を防ぐのがタングステンカーバイドコーティングだ。摩耗やブレーキダストの低減にも貢献するという。

 サーキット走行では0.3Gを超えるブレーキングをしたはずなので、回生ブレーキで不足する分は、油圧ブレーキを上乗せして制動力を発生していたはずだ。

 だが、ドライバー(すなわち筆者)が感じたのは、ただただ、しっかり利く安心なブレーキという印象だった。思いどおりに減速することができるので、安心して攻めることができる。

ハードブレーキング時には420mmの大径ブレーキディスクと10ピストンのブレーキキャリパー、そして回生ブレーキによって強力なストッピングパワーを発揮する。緩やかな減速時には回生ブレーキだけで制動力をまかなうが、そのフィーリングもごく自然だ。
ハードブレーキング時には420mmの大径ブレーキディスクと10ピストンのブレーキキャリパー、そして回生ブレーキによって強力なストッピングパワーを発揮する。緩やかな減速時には回生ブレーキだけで制動力をまかなうが、そのフィーリングもごく自然だ。

 『Audi e-tron GT quattro』と『Audi RS e-tron GT』では、足まわりも違う。減衰力可変ダンパーは両モデルとも装備。『Audi e-tron GT quattro』がコンベンショナルなコイルスプリングを採用するのに対し、『Audi RS e-tron GT』は3チャンバーのアダプティブエアサスペンションを搭載する。

 つまり、減衰力が可変なだけでなく車高も可変だ。効率をとことん追求する『エフィシェンシー』モードでは電費を稼ぐために車高を下げるが、『ダイナミック』では速く走るために車高を変化させる。

3つのチャンバーを備えるエアサスペンションは『Audi RS e-tron GT』に標準装備。車高を22mmダウン〜20mmアップさせることもできる。
3つのチャンバーを備えるエアサスペンションは『Audi RS e-tron GT』に標準装備。車高を22mmダウン〜20mmアップさせることもできる。

 インテリアは、“折り目正しい”という表現がぴったりくるムードで満たされている。EVだから、高性能モデルだからといって、奇をてらうようなことはしていない。運転にとって必要な機能が、ストイックなほど機能的にレイアウトされている。

 だからこそ、ホールド性に優れたシートに腰を下ろし、しっかりしたグリップのステアリングホイールを握った瞬間に、運転に臨むためのスイッチが入る。どこを押さえれば乗り手が浮き足立たない程度に高揚し、それでいて冷静さを保っていられるのか。アウディは勘どころを心得ているようだ。

『Audi RS e-tron GT』のインテリア。ステアリングはスポーティなフラットボトムタイプで、その奥に覗くメーターは12.3インチの液晶ディスプレイを採用。ステッチ入りの本革、カーボンファイバー、アルミ、アルカンターラがふんだんに使われており、乗員に上質さを感じさせる。
『Audi RS e-tron GT』のインテリア。ステアリングはスポーティなフラットボトムタイプで、その奥に覗くメーターは12.3インチの液晶ディスプレイを採用。ステッチ入りの本革、カーボンファイバー、アルミ、アルカンターラがふんだんに使われており、乗員に上質さを感じさせる。
ステリングには回生ブレーキのレベルをコントロールできるパドルスイッチが備わる。
ステリングには回生ブレーキのレベルをコントロールできるパドルスイッチが備わる。
前席にはホールド性の高いスポーツシートを採用。ドライバーズポジションは低めの設定だ。
前席にはホールド性の高いスポーツシートを採用。ドライバーズポジションは低めの設定だ。
ヘッドクリアランスこそタイトだが、ロングホイールベースとバッテリー配置の工夫により、後席の足元スペースは十分余裕がある。
ヘッドクリアランスこそタイトだが、ロングホイールベースとバッテリー配置の工夫により、後席の足元スペースは十分余裕がある。

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