ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONEのST-5Fクラスにおいて、GK5型ホンダ・フィットRSで王者に輝いたTEAM YAMATO。本田技術研究所の技術者を中心とした自己啓発チームとして60年以上の歴史を持つ名門チームは、2026年シーズンに新たなステージとしてFL5型ホンダ・シビック・タイプRでST-2クラスに参戦する。

 ディフェンディングチャンピオンとしてST-5Fに継続参戦せず、他のシビック・タイプRやミツビシ・ランサーエボリューション、トヨタGRヤリスといった強豪ひしめくST-2に挑むことになったのか、チーム代表であり、自らステアリングも握る椋本陵氏に聞いた。

■「仕事でもここまで悩まない」深夜まで続いた産みの苦しみ

 創設60周年という節目の2025年にフィットでST-5Fクラスのチャンピオンを獲得したTEAM YAMATO。ホンダから人材育成施策の一環として認定されているチームがST-2クラスに挑戦する理由は「クルマをゼロから作る経験」をチームメンバーに積ませることだったと椋本代表は語る。

「僕自身もそうですけど、今のチームメンバーは新規車両をイチから製作した経験がありませんでした。そしてFL5型シビック・タイプRは現在販売されているクルマです。普段は量産車の開発にも携わっている僕たちが、そのクルマを深く知るという観点でも、ST-2クラスにチャレンジすることに意味があると思いました」

 GK5型フィットRS同様に、流麗なシルバークロームカラーをまとった67号車『YAMATO CIVIC』は3月1日の公式テストで初登場。第1戦もてぎがデビューレースとなったマシンは、市販車であるFL5型シビック・タイプRを購入し、文字どおり「買ってバラすところから」スタート。しかし、その工程は想像以上に険しいものだった。

「僕たちはクルマをゼロから作った経験がないので、初歩的な部品の管理、どう組み上げるべきかというノウハウなど手探りでした。また、昨シーズンはチャンピオンを争うなかで、自分たちのレースを戦いながら並行して新車を製作するという、かなり忙しくて困難な状態でしたね」と椋本代表は振り返る。

 現段階でのYAMATO CIVICの仕上がりは「まだまだ20点くらい」とのこと。車両はまずレギュレーションに合致するかたちで製作してみようということで、エアロパーツの追加はしているがエンジン類は手を入れずにほぼノーマル状態。

「まずは本当の素のポテンシャルでどのくらいのレベルにいけるのかをしっかりと把握したうえで、次にどんな手を打っていけば良いかを、いろいろと試行錯誤しながら進めていこうと思っています」

 第1戦もてぎは木曜日に専有走行が設けられた。その際に燃料系トラブルに見舞われたYAMATO CIVICだが、トラブル原因が燃料ポンプにあるのか、あるいは別の場所にあるのかが自分たちだけでは解決できず、他のST-2シビックユーザーたちに教えを請う場面もあったと椋本代表。ただ、そういったことから得られる経験値は大きいと続ける。

「本当に何がトラブルの原因で、どう対処していいのかが分からないくらいのことが起こってしまい、ものすごく悩んでしまいました。深夜まで原因究明をしていたときに、チームの誰かがボソッと『このくらいの経験は仕事じゃできないよね』と言ったんですよ。それが良いのか悪いのかは分からないですけど、やはりサーキットという極限の場所に来ないと露呈しないこともあります。そういったことを経験することができるので、やはり“やる意義”はありますね」

「レースは短い時間のなかで、いかに成果を出すかが課せられます。練習走行から決勝まで時間が決まっていて、走行できる時間も限られている。その限られた時間のなかで、チーム全体でどうやって効率的に作業を進めていいけば良いかなど、そういった部分は普段の仕事や業務とは進め方がまるで違うので、すごく面白いです」

2026スーパー耐久第1戦もてぎ YAMATO CIVIC
2026スーパー耐久第1戦もてぎ YAMATO CIVIC(安井亮平/内山慎也/椋本陵)

■「視界の良さ」に驚き。実戦で見えた課題と今後の“弾”

 TEAM YAMATOのチーム代表とドライバーを兼務する椋本氏は2007年に本田技術研究所へ入社し、ホンダが誇る軽2シータースポーツカー『S660』の開発責任者(ラージ・プロジェクト・リーダー/LPL)として活躍。現在はデザイン開発や広報業務に携わりつつ、TEAM YAMATOのチーム代表兼ドライバーとして量産車開発とレース現場を繋ぐ役割を担っている。

 紆余曲折がありながら完成したYAMATO CIVICを実際にサーキットで走らせた第一印象は「思ったより普通で乗りやすいです。まだクルマが完全には仕上がっていないこともありますけど、もっと速いと思っていました。でも、意外と自分でも乗れるかもしれないと感じました」と評価。S660開発責任者としての気づきもあったという。

「フィットに比べて着座位置が低くなりましたけど、何より驚いたのは視界の良さですね。これは市販車の売りでもありましたが、サーキットで乗ってみて『開発で意図していたのはこういうことだったのか』と改めて気づかされました。フィットでは三角窓付近の視界に苦労することもありましたが、シビック・タイプRの開けた視界はサーキットで初めて知りました」

 迎えた2026年シーズン開幕戦もてぎ。YAMATO CIVICは104周を走り抜きST-2クラス7位で完走を果たした。しかし、レース中にはエンジンチェックランプが点灯する事象が頻発し、修復するために何度かピットガレージイン・アウトを繰り返すという苦しい実戦デビューとなった。

 レース後には「まずは完走という目標を達成できてよかった」と安堵する椋本代表だが、初めて戦ったST-2クラスには「ST-5もレベルが高いですが、ST-2にはまた違う次元の高さがあります。車種による戦闘力の違いも顕著に出ていて、大変なレースになりそうだと実感しています」と表情を引き締める。

 YAMATO CIVICの次なる戦いである第4戦SUGOに向けては「いろいろな弾(アップデート)は考えているので、そのあたりを投入して戦闘力をアップさせようかと思っています」と立ち止まるつもりはない。

「ホップ・ステップ・ジャンプではないですけど、昨年はST-5Fクラスでチャンピオンを獲ることができ、今年は新しいチャレンジを始めました。まずは着実にステップアップしていこうと思っていますけど、将来はST-2クラスでもシリーズチャンピオンを獲りたいですね」

 ST-5F王者の称号を引っ提げST-2に挑戦を開始したTEAM YAMATO。本田技術研究所の技術者を中心とした開発者集団の情熱がYAMATO CIVICをどう進化させていくのか、今シーズンの戦いから目が離せない。

2026スーパー耐久第1戦もてぎ YAMATO CIVICとKTMS GR YARIS
2026スーパー耐久第1戦もてぎ YAMATO CIVICとKTMS GR YARIS
2026スーパー耐久第1戦もてぎ YAMATO CIVIC
2026スーパー耐久第1戦もてぎ YAMATO CIVIC(安井亮平/内山慎也/椋本陵)

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