さらに不運だったのは、ピットロードでウェーレインに強引に前を塞がれ、先行できなかったことだ。ペースではマクラーレン・ホンダがはるかに優るにもかかわらず、コース上ではどうしても抜けない。その間に上位陣との差はどんどん開いて行く。ウェーレインには5秒ペナルティが課されたが、バトンにはいっさいのアドバンテージにはならなかった。

 スタートから60周近くをずっと最後尾で走り、何度も青旗を出され抜かされて行く屈辱。それが後半58周目に起きた接触事故の伏線になったことは間違いない。

 先行車に譲ってラインが空いた一瞬の隙を見逃さず、バトンは果敢にインを攻めた。しかし抜き切れず、ウェーレインは横倒しになりながらアウト側のウォールに衝突。バトンも左フロントサスを破損して、リタイアとなった。

F1モナコGP決勝 ウェーレインとの接触によりリタイアを喫したバトン
F1モナコGP決勝 ウェーレインとの接触によりリタイアを喫したバトン

「あそこで飛び込んだのは、今でも正しい決断だったと信じている」と、レース後のバトンは語る。「パスカルが僕を見ていないのがわかったけど、その時にはもう遅かった。事故の相手があんなふうにひっくり返って、無事かどうかわからない光景など、絶対に見たくないものだ。パスカルが無事だったことが、何より重要なことだった。僕はマシンを滅多に壊さないドライバーだ。それをやってしまったことを、チームに謝りたい」

 最後にバトンは、「今週は楽しめた。特に昨日(の予選)はね。いい思い出がたくさんできたよ」と、ようやく表情をほころばせた。バトン自身は、「これが最後のモナコGPだ」と復帰の可能性を否定するが、来季再びマクラーレン・ホンダのステアリングを握る可能性は、依然として低くない。バトンの華麗な走りとあの笑顔を、改めてみたいと思うファンは少なくないはずである。

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