18周目のキミ・ライコネンを皮切りに、上位勢がピットストップを行ない始める。新品タイヤでスタートしたマクラーレン勢は前走車たちよりも引っ張る作戦。普通なら先に入って新品タイヤでアンダーカットを狙うのが定石だが、1ストップで走り切れてしまうことからも分かるように今回はタイヤのデグラデーションが小さく、むしろウルトラソフトで走り続けてオーバーカットを狙うことさえもできる。これはQ2敗退で新品タイヤを履いたマクラーレン勢にとっては有利な状況と言えた。
MCL「前のクルマがピットインし始めている。ギャップを縮めろ」

アロンソもピットインに向けてプッシュをし始めた矢先、マクラーレン勢にとってさらに幸運な状況が舞い込んできた。上位を走っていたハースの2台が止まり、しかもコース上に止まったことでVSCが出たのだ。これでピットストップのロスタイムを10秒は稼ぐことができる。
MCL「BOXだ、入口のボラードの右側を通れ」
アロンソはこの利を生かしてルノー勢を逆転し、さらにレッドブルのマックス・フェルスタッペンとも交錯するところまで浮上した。
ALO「イエローが出ているのにVERが抜いていったよ」
MCL「了解、レースコントロールと話しているところだ」
ALO「彼は僕にポジションを戻す必要がある」
MCL「セーフティカーが導入された」
ALO「VANはプライムタイヤ?」
MCL「そうだ、彼の後ろのBOTもプライム、それ以外はみんなバックアップタイヤだ」
ALO「VERが僕を前に行かせようとしているけど、どうしたら良いんだ?」
MCL「彼は我々にポジションを戻すように指示されている」
ALO「OK、抜いたよ。P5だ!」
32周目にレースが再開されると、ここからはフェルスタッペン相手に熾烈な防戦が続くことになった。
MCL「さっきRBRがオーバーテイクを成功させたのはターン13だったよ」
ジョセフはレース序盤にルノーを抜いたダニエル・リカルドの動きを思い出し、アロンソに注意を促す。
レーススパンではターン13に向かうバックストレートではどうしてもディプロイメントが切れるが、フェルスタッペンはバッテリーの使い方を工夫してなんとか追い抜きを成功させようと試行錯誤を繰り返す。58周のレースが残り10周を切ると、アロンソもいよいよ切羽詰まった状況になってきた。
ALO「残り周回数のカウントダウンをしてくれ。燃料はOK?」
MCL「燃料は問題ないよ。残り5周」
