ハートレーはルクレールやバンドーンに対してアンダーカットを仕掛けるためにピットイン時にノーズ交換はできず、ダウンフォースを失っていることもあってグレイニングに苦しんでいた。それをなんとかしようとエンジニアも必死に方法を模索した。
STR「今のところデータ上ではタイヤは大丈夫だ。フロントを守るためにスイッチを使え。どのクルマも同じ問題を抱えているし、しばらくすると(グリップは)戻ってくるはずだよ。必要ならデフエントリー5、エンジンブレーキ5を使え」
HAR「左フロントが本当にもうないよ」
STR「ステイアウトだ、他に選択肢はないんだ。エントリー4を使え」
HAR「クレイジーなくらいアンダーステアだ。このタイヤじゃ走れない!」
一方のガスリーはレース序盤は前走車たちの後ろでひたすらタイヤをケアすることに専念して爪を隠していた。上位勢が16周目にピットインを始めると、いよいよ前とのギャップを縮めるようガスリーにも指示が飛んだ。
STR「PER(セルジオ・ペレス)とのギャップを縮めろ。プッシュできるか?」
ガスリー自身もチームもどこまでタイヤが保つかは未知数だったため、ピットインの準備はしていた。
STR「フロントフラップはどう?」
ガスリー(以下、GAS)「もう少し上げたい」
STR「全てはクリアだ。前がクリアになったからプッシュしろ」
21周目にペレス、23周目にエステバン・オコンがピットインして前がクリアになると、ガスリーはタイヤを労りながらも新品タイヤに履き替えた中団勢よりも速いペースで走り始めた。
STR「良い仕事をしているよ。後ろとのギャップを広げているぞ」
ウルトラソフトのヒュルケンベルグよりも1周1秒速いペースで走り続けたガスリーは、34周目になってもまだ新品タイヤを履いた中団勢より0.6秒速いペースで走行していた。
STR「後ろより0.6秒速いペースだ、良い仕事をしているよ」
しかし36周目あたりからタイヤのデグラデーションが急激に進む。
GAS「タイヤが厳しい、どんどんタイムを失っているよ!」
報告を受けたチームは37周目にピットに呼び入れ、ウルトラソフトに交換。これでペレスとサインツをオーバーカットし、フェルナンド・アロンソとフェルスタッペンの後ろでコースに戻った。
GAS「彼(VER)が前にいて抑え込まれている」
STR「VERの後ろでタイヤをセーブするんだ。彼はいずれピットインする。後ろのSAIは君よりも遅いよ」
フェルスタッペンがピットインし、アロンソはギヤボックストラブルでリタイア。すると6番手オコンとのギャップもそれほど大きくはない状況となった。ガスリーのタイヤはオコンよりも14周も若く、中団トップのポジションも見えてきた。