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2018.06.06

ロリー・バーンが語る“生涯忘れられないマシン”。カリスマを開眼させたベネトンB194


F1 | ロリー・バーンが語る“生涯忘れられないマシン”。カリスマを開眼させたベネトンB194

 V8、V10、V12のエンジンが入り交じるなかで、この年のベネトンはフォードのゼテックR V8 エンジンを搭載。バーンは、このエンジンを高く評価していた。

「ゼテックRはコンパクトで軽く、燃費の良いエンジンだったので、B194に大きく貢献してくれた。別にパワーがあったわけではないが、V8でエンジン本体が短く、これがショートホイールベース化に役立ったんだ。おまけにパワーバンドやトルクバンドが広く、スロットルにリニアに反応する良いエンジンだった」

「おかげでギヤボックスは6速で十分だったし、その全長も短く作れたので、ホイールベースを100㎜短くできた。ショートホイールベースは軽量化、重量の車体中心ヘの集中化、車体剛性の向上にきわめて有効で、B194の開発コンセプトにフィットしたエンジンだったね」

「ちなみに、翌年のB195に搭載した3000㏄のルノー・エンジンは、3500㏄だったゼテックRよりもパワーは出ていたよ。でも、F1エンジンのトップパワーはそれほど大きな問題じゃないんだ。一番使うレンジでリニアに反応してくれれば、マシンは速くできるんだ」

 バーンの説明にもあるとおり、ゼテックRエンジンはコンパクトで燃費がよく、レースのスタート時から他車よりも軽い燃料搭載量で走れたので、それが序盤の快走につながっていたはずだ。

 それにダウンフォースは車体状況にかかわらず広いレンジで安定しており、軽量・低重心でショートホイールベース、素早い回頭性とリヤの追従性が優れているという、B194のトータルパッケージの良さは群を抜いていた。ゴーカート走法から生み出されたシューマッハーのドライビングスタイルに、B194が見事に呼応したと言うべきなのだろう。

「確かに、ミハエルの果たした役目は大きかった。しかし、巷で言われているほどB194は、“ミハエル・スペシャル”ではなかったよ。彼はベネトンでフル参戦3シーズン目を迎えていたわけだから、チームの目がミハエルを向いていたのは確かだし、あらゆる条件がミハエル・ファーストであったことも事実だ」

「だが、B194はあくまでもレーシングカーの理想を追求して生まれたマシンで、チームとミハエルが一緒になってそれを追い求めた結果なんだ。それに、限界領域で走るF1マシンが乗りやすいなんてことはまずあり得ない。トップドライバーなら、誰もがそれを理解しているはずだ」

 それでは、自らの理想を追求したB194は、バーン自身にとってどんなマシンだったのか。

「B194は私のなかで、新しい時代に踏み出すきっかけになってくれたマシンだ。ベネトン時代の最高傑作だったと思う。翌年のB195でもチャンピオンを獲得したが、実際の性能や完成度はB194を超えていないんだ。

 94年の最終戦オーストラリアGPでミハエルはデイモン(ヒル)と接触してタイトルを手に入れることになったが、それは数字上のトリックさ。ベルギーGPの優勝を含んで2レースを失格、それもあり得ない理由でだ。フォーメーションラップでデイモン(イギリスGP)を抜いたとか、プランクが減っていたとか、因縁をつけられた。それに加えて2レースの出場停止。このペナルティも、まったく訳の分からないものだった。我々は何もしていないというのに……」

 さらに、バーンはこう続けた。

「B194は私にとって、生涯忘れられないマシンだ。B195をデザインするなかで、B194という素晴らしいマシンを消し去ろうとする政治的な力を感じた。だから嫌気が差して、95年でF1からのリタイアを決めたんだ。B194がそのきっかけとなった(ジャン・トッドやブラウン、シューマッハーに誘われ、97年にフェラーリへ復帰)。

B194など数々の名車を手がけたロリー・バーン氏

 想像してみてくれ。もし、あの悲しい事故さえ起こらなければ、セナの駆るFW16とミハエルの駆るB194が最終戦まで激しいチャンピオン争いを繰り広げていたはずだ。それはきっと、F1史に残る最高のシーズンになったと思う」

 遠い空の向こうを見つめるように語るバーンの脳裏には、きっとB194のシューマッハーとFW16のセナによる激しいバトルが浮かんでいるに違いない。それは、バーンが育てた伝説的ドライバーふたりによる戦いなのだから。

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