スタッフとの交流会のあと、二人はファクトリー内の施設を順に見て回った。ここでも二人の個性の違いを感じさせる出来事があった。案内する田辺豊治テクニカルディレクターを、ガスリーが独占して離さないのである。テストベンチやミーティングルームなどで終始横にいて、質問攻めだった。それは視察が終わって、建物を出てからも続いた。一方のハートレーは、手持ちぶさたに一人で歩いていることが多かった。

ガスリーが具体的にどんな質問を発しているのか、言葉は聞こえなかったけれども、とにかくずっと田辺エンジニアの横に寄り添っていたのである。何かを知りたいという欲求もあったことだろうが、同時にライバルでもあるチームメイトに、田辺エンジニアと話させたくないという欲求も感じたといったら、うがち過ぎだろうか。しかし僕といっしょに取材していた本サイトでもおなじみの尾張くんも、ガスリーのその密着ぶりを「まるでセナみたいですね」と言っていた。
ガスリーがはたしてアイルトン・セナのようなドライバーに、成長するかどうかは今はまだわからない。しかしあのはた目には異常なほどのどん欲さが、レーシングドライバーに必須の能力であることは間違いないだろう。
