ただしトロロッソ・ホンダ1年目の2018年も、テストではほぼトラブルフリーだった。しかし開幕戦でいきなりピエール・ガスリーがMGU-Hのトラブルに見舞われ、リタイアを余儀なくされている。「テストでトラブルが出ないと、レースで大きなトラブルが出るんじゃないかと、逆に心配になるのでは?」というちょっと意地悪な質問を投げかけると、田辺テクニカルディレクターはこう答えた。
「確かに今の段階では、100%安心というわけではありません。(パワーユニットが)壊れずにレースを走り切って、それで初めて合格ですから」
とはいえ信頼性の構築は、ゴールの見えない厳しい作業である。パフォーマンスを上げていけば、今まで以上の高い負荷で壊れやすくなるからだ。信頼性向上とパワーアップは、二律背反の達成目標と言ってもいい。それでもパワーユニット供給メーカーが、トラブルが出すことは許されない。
「とにかく今は、確認を進めていくだけです」
そう語る田辺テクニカルディレクターの表情は厳しかったが、この4日間で成し遂げたことへの達成感も確かに窺えたのだった。


