さて決勝レースですが、ケビンに関してはセーフティカー(SC)出動中のピットストップで、今回のレースの勝負が決まってしまいました。その詳細を説明したいと思います。
11周目にSCが出動したとき、ケビンの前にはダニエル・リカルド(ルノー)がいたのですが、なぜかリカルドはものすごくゆっくり走っていたんです。ここでリカルドに詰まったせいで、ピットストップを終えた段階のケビンは、SC出動中の基準となるラップタイムから5秒という大きな遅れをとってしまいました。つまり、基準タイムで走っている他のクルマに対して5秒ロスをしたということです。

コースに戻った時の位置も、ランド・ノリス(マクラーレン)をはじめとするミディアムタイヤを履いているドライバー3台、さらにはキミ・ライコネン(アルファロメオ)とリカルドの後ろという、まさに最悪の位置でした。
なぜなら、ノリスは前を走るチームメイトのカルロス・サインツJr.にギャップを築かせるために、レースが再開してからは1周1.5秒くらいペースを落として後続を抑えて走っていたんです(これはどれだけ遅く走ればよいかという明確な指示を、マクラーレンがピットウォールから出していました)。そのおかげでサインツJr.は、SCが解除されてから10周ほどでピットストップ1回分のマージンを稼ぐことが出来ました。
結果論ですが、リカルドに詰まってピットストップをしたらノリスの後ろになると確実にわかった時点で、ケビンのピットストップをキャンセルするべきでした。SCが出た瞬間の計算では、ケビンはピットストップを行ってもノリスの前でコースに復帰することは可能でしたが、このときケビンは既にピットストレートを走っていたので、ピットインのタイミングを少しの差で逃していました。
もしあと5秒くらい早くSCが出ていて、ケビンがターン18辺りを走っていたら、すぐにピットに入れて、ノリスの前でコースに戻れていたはずです。それができていれば、5位に入賞出来ていたと思います。
結局は判断ミスということですが、あの時点では、ノリスがあれほどまでにペースを落として走るとは想定していませんでした。サインツJr.はソフトタイヤでスタートしましたが、ノリスはミディアムタイヤだったので、当然マクラーレンは戦略の違いを活かしてサインツJr.をサポートすることができます。これを見逃してしまったり、ケビンのピットストップについては反省点が多かったので、ファクトリーに戻ってこれからのために見直しました。
タイヤに関しては、上位勢がハードタイヤに交換するなかでケビンはミディアムタイヤを選択しましたが、これは正しい判断でした。というのも木曜日のフリー走行を走った段階で、ハードタイヤの感触が良くなかったので、なるべくレースでも使いたくなかったんです。レース序盤の11周目というのはまだトラフィックも処理しきれていない状況ですし、ここから最後までミディアムタイヤが保つかどうかというのは、木曜日のデータを見てもギリギリでしたが、最終的には走りきることができたので、僕らにとってはミディアムタイヤで正解でした。
逆にロマンの方は、戦略の判断は簡単でした。ロマンは13番手からのスタートだったので、前のドライバーと同じことをやっていたら絶対にポイントを獲れません。それに、もしロマンがSC出動中にピットに入っていたら、隊列の最後尾まで順位を落としていたと思います。ロマンがポイントを獲るためには、とにかくできるだけピットストップを遅らせるしかなかったんです。ですから彼の戦略は他のドライバーには左右されませんでしたし、ソフトタイヤで50周も走ってくれて、よくやってくれました。
結果には繋がりませんでしたが、速さはありましたし、これまで課題の多かった低速サーキットのモナコでここまでやれたという大きな自信を持って次のカナダに向かえると思います。予選ではうまくタイヤを使えましたし、レースでもロマンがあれだけのことをやってくれましたからね。
ですが、カナダはモナコ以上に厳しいのではないかと予想しています。ハードタイヤは硬すぎるので、モナコ同様にみんながあまり選択していないですし、またミディアムタイヤとソフトタイヤがメインになると思います。モナコでうまく機能させることができたタイヤではありますが、カナダはモナコと違って長い直線のあるトラックで、ダウンフォースを削らなければならないので、この状況でモナコと同じようにタイヤを使うことができるかどうかがキーポイントになりそうです。


