──ファクトリーは、どんな様子ですか?

本村さん:メルボルンから帰国後はほぼ家から出ていないのでわかりません。

──イタリアおよびファエンツァで、収束の兆しは見えていますか?

本村さん:ロックダウンから1カ月以上たった今、徐々に感染者数が減ってきました。回復された方の数も増えてきました。やはりこれくらい徹底的に国を挙げてロックダウンしないと、成果は現れないものなんですよね。

──今はどんな思いで日々を過ごしてますか。

本村さん:自分はずっと家にいて人との交流を遮断しているので、安全といえば安全です。自分が感染しないだけではなく、自分が人に感染させないことを常に考えて行動しています。少なくとも私の同僚はみんなそうしています。

 逆に日本の方が心配です。数週間前の映像でしたが、まだ人が密集するイベントなど開催している様子をニュースで見て、本当に大丈夫なのかな、と。何か違う惑星の様子を見てるような気持ちにさえなりました。海外にいる人はみんな同じ思いです。日本はちょっとゆるいんじゃないかな、と。

 これはただのインフルエンザではないんです。確かに最初はアジア圏で感染が確認され、ヨーロッパではまだまだ他人事みたいな雰囲気でした。新型のインフルエンザみたいなものでしょう、と。でもそれがたった数日で、国を封鎖するほどの歴史的な大惨事になってしまいました。マスクをあれだけ不気味がり、嫌がっていた西洋人が自ら進んでマスクをする。それくらい、西洋の人の感覚や文化までひっくり返してしまったんです。このウイルスを甘く見てはいけません。

──チームの同僚の声があれば、紹介してください。

本村さん:チーム全員と話したわけではないのですが、みんな家でできることをそれなりに楽しんでやっているようです。お料理したり庭で筋トレしたり。オンライン環境がある限り、繋がることはできますので、頻繁にテキストを送って声を掛け合っています。今はソーシャルメディアがあるので、どんな感じで過ごしているか近況がわかるメンバーもいるので安心です。

 ビジネス的にはヴァーチャルグランプリなど、eスポーツの分野の伸びも期待できますし、すべてがマイナスなわけではないと思います。私もシャットダウンの間にイタリア語を勉強したり、F1に関する資料を読んだりしてます。ファンの皆さんも、もしお時間ありましたらぜひアルファタウリのホームページYouTubeでも覗いてみてください。英語やイタリア語の勉強になりますよ。

 まだいつロックダウンが解除になるかわからないので、いつみんなに会えるかもわからないけれど、またレースで再会できることを楽しみに毎日過ごしています。みんな元気がないわけでも下を向いているわけでもないです。レース再開が待ち遠しい気持ちは一緒です。レース再開時には素晴らしいレースをお届けできるよう、チームも今から気持ちを引き締めていることでしょう。今後もスクーデリア・アルファタウリ・ホンダをぜひ応援してください。よろしくお願いいたします。

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本村由希
 日本生まれの日本育ち。日本の大学を卒業後渡英、紆余曲折を経て、イングランド・プレミアリーグのふたつのチームで働く。どちらの仕事でも、スポンサーシップ・セールスに関わった。イギリス生活に疲れて退職、スペインで休養のつもりがなぜか気が変わり、Real Madridが経営するビジネススクールでMBAを取得。オリンピックの仕事に就く予定が、アルファタウリから声が掛かりF1の世界で働くことに。チームでは全レースに帯同し、現地広告代理店とスポンサーの調整や、ロゴや肖像権をきちんと使えているかの確認、そして新規スポンサーの開拓などに世界各地を飛び回っている。

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