ポイントリーダーとなっているハータは、初タイトル獲得に意欲満々だ。彼を走らせるアンドレッティ・グローバルは、去年から在籍しているカイル・カークウッドの能力が高く、エリクソンの新加入もあって収集されるデータとその解析もクオリティの高いものになってきたようだ。
提携チームのメイヤー・シャンク・レーシングにローゼンクヴィストが加わったのもプラスに作用しているだろう。F1進出に向けて、大きな反対に遭いながらも邁進を続けるマイケル・アンドレッティとしても、2012年のライアン・ハンター-レイ以来となるインディカーの栄冠獲得を果たしたい。

ハータとアンドレッティの倒すべきライバルは、言わずもがな……のガナッシとペンスキーだ。この2チームは2013年から11シーズンに渡って王座を獲り続けてきている屈指の強豪だ。
今季のチップ・ガナッシ・レーシングは、初の5台体制となった。しかし、毎戦勝利を争えるのはディクソンとパロウのふたりで、他の3台は若手の育成……いう布陣だろう。
第3戦でルーキーのルンドクヴィストを3位フィニッシュさせた辺りはさすがだが、若手に対して昨年までのエリクソンや佐藤琢磨のようなクオリティのフィードバックは期待できない。走らせる台数は増えたが、チームとしての戦闘力は下がっているのではないかと思わされる。

対するペンスキーは、王座奪還に向けて力強いシーズンスタートを切ったと見えた。実際、シーズンオフの間の奮闘によって彼らのマシンはかなり速くなっているように見えている。しかし、ルール違反のプッシュトゥパス使用で評判は地に堕ちた。
50年を越す伝統を誇る名門チームがやるべきことではなかった。失格が発表になった直後の第3戦で、マクラフランが圧倒的なポール・トゥ・ウイン。あれほどの勝ち方ができるチーム力がありながら、なぜルールに背くことをしてしまったのか……。

開幕からの3レースを見て、チャンピオン争いの中心となるのは複数のタイトル獲得経験をもつガナッシおよびペンスキーのドライバーたちであるパロウ、ディクソン、パワーであることが明らかになった。
そこに、マクラフランやハータ、オワードが絡んで行くだろう。開幕戦の優勝をはく奪されたニューガーデンは、失格のダメージから立ち直ることができるだろうか?彼は昨年のインディ500ウィナーだが……。

最後に、ドライバーのケガによって変わった開幕を迎えたアロウ・マクラーレンについて。直近4シーズンほど、彼らはガナッシとペンスキーによる牙城を崩しに行く筆頭と考えられていた。しかし、その勢いは鈍ってきたように見えてきている。
開幕戦では、オワードが久しぶりの勝利を挙げたが、それはニューガーデンの失格によってだった。もちろん、オワード自身は健闘している。しかし、チームの足元は固まり切っておらず、3台体制は彼らの狙い通りに機能していない。
昨シーズンが移籍1年目だったアレクサンダー・ロッシは、チームの期待に応える走りをほとんど見せることができていない。そして、今年の3台目については不運としか言いようがない。ローゼンクヴィストを放出して迎えたデイビッド・マルーカスが、マウンテンバイクで左手首を負傷して開幕3戦に出場できなくなったのだ。

結局彼は、解雇の憂き目を見た。開幕直前にできた穴を埋めるのは難しいようで、次期ドライバーについての発表はまだで、今シーズンの3台目は数人のドライバーで回して行くしかないかもしれない。
予測不能の不可抗力によって作り出されてしまった状況により、彼らの足踏みはさらに重いものとなり、その間にアンドレッティが力を盛り返した。いよいよ開幕した今季のインディカーは、2013年までのようなペンスキー、ガナッシ、アンドレッティの三強時代が訪れそうな気配となっている。


