琢磨が最後のピットで装着したのは新品のレッドタイヤ。当然、そのパフォーマンスをフルに活かして順位を上げていきたいと考えていた。ユーズドレッド装着で琢磨の後ろにピットアウトしたパワーは、もはや琢磨のポジションを脅かせる存在ではなかった。

 残り23周、琢磨は前を走るベテラン、カナーンをパスした。「TKがヘアピンで一瞬リヤを滑らせた。それを見てすぐにプッシュトゥパスを押した」と琢磨。厳しい状況でも琢磨はコース上でのオーバーテイクをやってのけた。

 これで順位は5位。前は開幕戦ウイナーのファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)だ。琢磨はカナーンを抜いた直後、すぐさまモントーヤとの差を一気に縮めてみせた。

 そして、ゴール前の10周、琢磨は4位を狙うアタックを続けた。しかし、巧妙なライン取りでモントーヤはパスのチャンスを与えず、ふたりはテール・トゥ・ノーズでゴールラインを横切った。

「今週末は良い戦いができたと思います。プラクティスで僕たちが置かれていたポジションを考えれば、予選で8位になるだけのカムバックを果たせたことがまず良かったですし、レースでは2周目から燃費セーブを始めて、結局は一度もフルコースコーションが出ず、難しいレースになっていました」

「自分たちは冷静にゴールまで戦い抜けました。小さなミスひとつ許されない緊迫した戦いが全行程で続く中、プッシュすべきところでプッシュをしてトニー・カナーンをパスし、ファン・パブロ・モントーヤにアタックすることができました。ピットタイミングなどの作戦面も良かったし、クルーたちのピットストップも素晴らしかった。マシンもレースを通して、どちらのタイヤでも高いパフォーマンスを発揮し続けていました」と、琢磨はホンダ勢トップとなる5位という好成績と、チームの実力アップを喜んでいた。
 
Report by Masahiko Amano / Amano e Associati

インディカー第3戦ロングビーチ/佐藤琢磨
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