これらの変更点について、シェイクダウンで最初のドライブを終えた佐々木に聞くと、「見た目はねほとんど変わらないのですが、乗り味についてはもう全然違うクルマになっていて、とくに安心感が高まっているんです」と話した。

 ドライビングフィールとしては、STIの狙い通りにリヤタイヤの接地感が向上しており、若干残っていたピーキーさが改善されたのだという。

「2025年型の車両特性としては、少し強引にリアの限界値を落としてクルマの向きを変えながら走っていたところがありました。路面の状態が良かったり、ドライコンディションだったりするとそこまで問題にはならなかったのですが、ニュルのように路面のコンディションが悪かったり変化が大きかったり、あとはウエットコンディションだったり、あとは抜いたり抜かれたりする際にラインを外したりしたときに、その挙動に対するピーキーさが残っていたんですよね」

「そのあたりをジオメトリの変更だったりABSのセッティングだったり、各部の少しずつの変更がまとまったことで良い方向に改善させることができ、リヤの安定感につながっているのだと思います」

 このリヤの挙動の安定感は、とくに決勝での速さに効いてくるはずとのことで、エンジンの出力向上などよりも“欲しかった部分”なのだという。

「ニュルは路面サーフェスが日本とは全然違うし、コースの広さも違うし、アップダウンも格段に大きくて。そのなかで、他のクラスと抜きつ抜かれつになったり、ジャンプするコーナーだってあるし、そういったコンディションのなかでもブレーキが安定していたり、ステアリングの舵角が変化したときでも安定していたり、そういった不安定な状況を切り抜けられる特性が、このクルマには欲しかった部分なので」

「その方が1周の予選タイムよりも、24時間を走った時のラップタイムが大幅に変わってくると思うんです。やっぱり抜いたり抜かれたりするときの動きが悪いと、ニュルなんかは1周が長いので一気に数秒落ちてしまうんです」

「そこが良くなれば決勝でのロスタイムが減るはずで、それが24時間も走って全部で100周以上あれば、結果的にはかなり大きくゲインできて、周回数も増やせるんじゃないかなと思っています。ニュルなら予選よりも決勝で速いクルマの方がいいんです」

 ほかにも佐々木として外せない改良ポイントは、車内の暑さ対策。「今年のニュルはもうめちゃくちゃ暑かったんですよ。時期が早まったからなのか、地球温暖化なのかわからないですけどね(笑)」とはにかみながら振り返ったが、佐々木自身にとってはかなり印象的だったようで、速さ向上と同等に改善が必要な部分として対策を進めてきたという。

「ダクトの経路変更もそうですが、室内の空気を抜くためにリヤフードに穴を開けたんです。そしたらすごく風が動いて抜けるようになってくれた。『こんな効果があるんだ』と気づいてからは、『どうせなら空力のアイテムにしちゃおうよ』と話が進んで、今回の形状に落ち着きました」と、室内温度の対策がまさかの空力開発につながったと明かした。

「新しくなったサイドミラーに当たった空気がテールに向かって流れるときに、室内の空気を抜く流れと合わさってうまい具合に引っ張ってくれているみたいで、結果的に良いダウンフォースが出るという、面白い相乗効果もありました」

 最後には、「今のニュルのレースはペースが速くて、そんななかで走り続けるととにかく長く感じるし、最近はスピードが上がるにつれてクラッシュ率も高まっていて、正直キツすぎるんで。だからこそ安定して“楽に走れる”方が、結果的に速さにつながるはずなんです。もっと楽にレースができるようにしようよ、ということでいろいろと開発をしてみた感じですね」と2026年型マシンの方向性を総括した。

 年々激しさを増すニュル24時間レースでどうすれば生き残れるのか、楽に24時間を戦い抜けるのか。2025年大会のクラッシュを受け、2026年のSTI NBR Challengeはサバイバル力を高めたWRXでリベンジを狙う。

「今のニュルはキツすぎる。“楽に走れる”方が速い」と佐々木孝太。2026年型STI NBR Challengeの開発はサバイバル力を重視
富士スピードウェイでシェイクダウンされた2026年型STI NBR CHALLENGEのマシン
「今のニュルはキツすぎる。“楽に走れる”方が速い」と佐々木孝太。2026年型STI NBR Challengeの開発はサバイバル力を重視
富士スピードウェイでシェイクダウンされた2026年型STI NBR CHALLENGEのマシン
「今のニュルはキツすぎる。“楽に走れる”方が速い」と佐々木孝太。2026年型STI NBR Challengeの開発はサバイバル力を重視
2026年型STI NBR CHALLENGEのサイドミラー。翼断面形状が採用されている
「今のニュルはキツすぎる。“楽に走れる”方が速い」と佐々木孝太。2026年型STI NBR Challengeの開発はサバイバル力を重視
2026年型STI NBR CHALLENGEのリヤハッチ。2カ所の開口部が設けられている
「今のニュルはキツすぎる。“楽に走れる”方が速い」と佐々木孝太。2026年型STI NBR Challengeの開発はサバイバル力を重視
STI NBR CHALLENGEの技術開発陣にシェイクダウンのフィーリングを伝える開発ドライバーの佐々木孝太

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