──DTMのニューマシンの開発状況は?
JM:新型のパワートレインの実走テストがやっと始まったばかりだ。その前はごくわずなロールアウトが社内のテストコースであったのみで、路面でどう動くのか、冷却装置が新エンジンに対して適合しているのか等を確認し、エストリルでのテストで数多くの項目をチェックし、それを持ち帰って精査した。ヘレスのテストではそれをさらに発展させて挑み、一歩ずつ段階を重ねている状態だ。ベンチマークやシミュレーターではもちろん事前に数多くのテストをしているものの、実走テストでは必ずしもそのとおりにはいかない上に、より細部のバランスまでじっくりとマシンと向き合わなければならない。
例えば、BMWで言うと今季モデルのキドニーグリルはすべて閉じられているが、来季モデルはフルオープン。マシンの中へ空気を取り込む、またそれを排出するありとあらゆる箇所に最も神経を注ぐといった新規の研究集中する箇所があるなど、まったく新しいコンセプトに焦点を注いでいる。ホモロゲーション取得までの残りわずかの月日に総力を上げなければいけない。
──ニューマシンはポルトガルのテストでは最高速で292km/hを記録しましたが、来年のホッケンハイムの開幕戦では300km/h越えを期待できそうか?
JM:さぁ、どうだろうか(笑)。今後のマシンのポテンシャルの成長に期待したい。マシン、それもエンジンがまったく別物の新車になることで、ドライバーはそのスタイルやタイヤマネージメントもすべて新しくする必要がある上に、現状態のテスト結果だけでは本番にどれだけのポテンシャルが発揮できるのか……。まだはっきりとは見えていない。
──季は勝つメーカーやマシンにかなり偏りがあったが、来季は勝つチャンスは平等になると思うか?
JM:BMW、アウディ、アストンマーチンにとってすべてが新規定での参戦となる2019年、いちばんマシンや規則を深く理解し、速さや車両が安定してポテンシャルを出すポイントを見出した者だけが前に抜き出る事ができると思う。プロの世界では『まだマシンの理解ができていない』等という言い訳はまったく通用しない。アストンマーチンは非常に経験豊かなパートナーであるHWAがサポートしており、DTM初参戦ではあるが素晴らしいマシンを用意してくると確信しているが、彼らがDTMに参戦を決めてからまだ時間的余裕がなく、状況を語るにはまだ早過ぎると思う。
■「“ハイパーカー”は我々の望むものとは違う」
──WEC世界耐久選手権について、2020年に導入されるWECに導入される“ハイパーカー”規定により、かねてからさまざまなメーカーの新規参入が噂されており、その中でもBMWもハイパーカーでの参戦を視野に密かに開発をしているのでは? との噂がされているが、その噂は本当なのか?
JM:LM-GTEクラスには強いトップブランドが集結しており、僅差の激しい戦いで、この強敵の中でのチャレンジのし甲斐や意義を感じているし、M8 GTEをさらに成熟させてポテンシャルを上げなければいけない。
ハイパーカーのレギュレーションは5年間のコスト面も考えてのことだとは理解するが、開発初期には特に駆動系の開発により多くの時間と費用が費やされると予想される、それらを念頭に入れて費用を概算すると、ACOが提示する費用の2~2.5倍の費用を用意することが必須となってくるだろう。そのため、BMWワークスとしてのハイパーカークラスの参戦は考えていない。また、ハイパーカーはLMP1レベルのパフォーマンスに対してのGTマシン風なデザインであり、我々が望む『レーシングカー』とは違っていた。