予選後の記者会見でLynk&Co 03 TCRをドライブするイバン・ミューラーが認めたとおり、その後のパドックではライバルチームを中心とした“秘密の会合”も開かれ、ここにLynk&Coポールスター・シアン・レーシングを除く全チームのマネージャーとオーガナイザー担当者が出席。

 あるチーム関係者によれば、そこでは「これはWTCC(世界ツーリングカー選手権)にシトロエンがワークス参戦してきたときと状況が酷似している」との話題も挙がったという。

「Lynk&Coはどうみてもワークスプログラムなんだ(WTCRへのワークス参戦は禁じられている)。1チーム2台の規定に関しては別枠登録(で台数を増や)しても構わない。マシンは吉利汽車が作ったものだが、彼らのマシンは(Lynk&Coシアン・レーシングが走らせる)あの4台以外にどこにも存在していない」

「去年はヒュンダイ勢がシリーズを席巻したが、ヒュンダイのマシンは誰もが購入できる状態で、WTCR以外のシリーズでも戦っていたから明らかに状況が違う。シトロエンがWTCCでワークス活動を始めたときを彷彿とさせるよ」

 ここでふたたびTCRテクニカル・ワーキング・グループが協議を行い、FIAツーリングカー・コミッションの迅速な承認を経てBoPをイベント前の設定へ戻すことを決定した。

 これは2017年のTCRインターナショナル時代、ヒュンダイi30 N TCRのプレ・デビューレースとなった中国戦以来となるセッション間BoP調整となり、一連の騒動に対しWSCの代表を務めるマルチェロ・ロッティも「彼ら(Lynk&Co)はWTCR以外のTCRシリーズに参戦しておらず、まだ開幕から3戦を終えた段階でBoP調整に必要なデータが不足していた側面はある」と火消しに奔走する発言も。

 その直後に開催されたレース1では、Lynk&Co 03 TCRを操るテッド・ビョーク、ミューラーのふたりがPWRレーシングのミケル・アスコナ(セアト・クプラTCR)を1.2秒差で退けワン・ツーを記録。その後の予選でもヤン・エルラシェール(Lynk&Co 03 TCR)がポールを獲得したが、2番手ノルベルト・ミケリス(ヒュンダイi30 N TCR)に対してコンマ1秒差と、その間隔は大きく縮まることとなった。

 この混乱の主要因となった土曜予選前のLynk&Coに対するエンジン出力緩和について、ロッティは「その決定はTCR技術部門によるもので、もちろんLynk&Coからの要請を受けてのものではない」と、改めて説明した。

「私から言わせれば、Lynk&Co自身も土曜のペースに驚いたのではないかな。予選の状況を見て、我々はTCRのエンジニアと即座に協議を始めた。彼らは、マシンに対する理解度が足りないときには往々にしてこのような事態が起こりうると説明した」と続けたロッティ。

「誰もが『BoPは機能していない、不十分だ』と文句を言う。これはある意味で正しい姿なんだ。(抗議の象徴である)黄色いジャケットを着ていないパリのデモのようなものだ」

来季からF1開催の決まったオランダ・ザントフールトには、奇しくもFIA会長ジャン・トッドも姿を見せる週末となっていた
「僕らはまるでサンドバッグだ。彼らは自分たちの仕事に集中すべき」と、ライバルをけん制したヤン・エルラシェール
WTCC時代を含め、世界的ツーリングカー選手権の舵取りを担ってきたマルチェロ・ロッティ(右)だけに、事態収束に向け素早い打開策を見いだせるか

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