しかし、このモンツァで抜群のスピードを披露するフレンチ艦隊は、ブリシュ、コンテの2台ともに序盤からオーバーテイクショーを開演。王座への意欲を見せたブリシュは8周目の1コーナーシケインでブルータル・フィッシュ・レーシングの初代UK王者ダン・ロイド(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR)を仕留めて2番手にまで這い上がってくる。

 ラップ10に突入する頃には、首位争いのファイルズvsブリシュ、3位表彰台争いのロイドvsコンテの構図が出来上がり、残りは3周。11周目のコントロールライン通過で先頭2台のギャップは0.7秒にまで詰まっていく。

 最終パラボリカや1コーナー、その先のロッジアでも展開された攻防撃は、しかしチャンピオンタイトル獲得経験者のファイルズが一枚上手となり、そのままのポジションで13周のチェッカー。最後は1.223秒差までギャップを開き、見事ヨーロッパ・シリーズも制することとなった。

「ジュリアン(・ブリシュ)は僕らを最後の1周、最後のコーナーまで苦しめた。こちらも死に物狂いでプッシュしたよ。昨日の予選ではスピードが足りず難しい状況に追い込まれたが、ここモンツァでのタイトル獲得は本当に最高の気分だ。チームとヒュンダイを誇りに思うし、このマシンを開発した(ガブリエル・)タルキーニにも感謝を捧げたい」と、喜びを語ったファイルズ。

 2位に終わったブリシュも「今日は可能なことをすべてやり切った。シーズン中に犯したふたつ、みっつのミスがこの結果につながった。ジョシュにはおめでとうを言いたい」とライバルを祝福。そして3位にはファイナルラップの1コーナーでパッシングされながらも、その際の接触でコンテに10秒加算のペナルティが降ったことで、ロイドが正式にポディウムを確保している。

 この結果により初のTCRヨーロッパ王者を手にしたファイルズだが、レース後の車検を経てTCR技術部門はヒュンダイのECUソフトウェアに対し、より詳細な調査が必要だと判断。シリーズ最終結果も「暫定扱いとする」旨を発表した。

 TCRを運営するWSCグループ代表のマルチェロ・ロッティも「つねにTCRの競争を公正かつ最高なレベルに保つための措置」と語り、徹底した技術チェックを優先するとしている。

「もちろん、プロモーターやコンペティター、マニュファクチャラー各社にとって理想的な状況ではないことを理解しているが、これは技術部門が完全な技術確認を可能にするために適切であると判断したものだ」

R2終盤は4台のデュエルに。首位ファイルズ、2番手ブリシュの差は一時0.7秒にまで詰まる
勝者ファイルズ、2位ブリシュに続き、3位にはホンダ・シビックのダン・ロイド(右)が続いた
週末もうひとりの主役。Team WRTのサンティアゴ・ウルティアはR1で予選17番手から5位、R2でも6位に入り、ルーキーイヤーをランキング3位で終えた

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