ただNASCARに参戦しているドライバーの多くがダートオーバルでレースキャリアを始めるので、大半のドライバーはなんとかマシンを乗りこなしていた。

 一方、この大会に参戦していたロードレース出身者、つまりダッジ・チャージャーをドライブしていたファン・パブロ・モントーヤやダリオ・フランキッティ、パトリック・カーペンティアなどは苦戦しているように見えた。

 レースは当時NASCARでもっとも人気のあるドライバーだったデイル・アーンハートJr.(シボレー・インパラSS)を先頭にスタート。一時はクリント・ボウヤー(シボレー・インパラSS)とトップ争いを繰り広げた。

 しかし、このレース全体を支配していたのはカイル・ブッシュ(トヨタ・カムリ)で、終始彼を追い続けたのがジョー・ギブス・レーシングのチームメイト、トニー・スチュワート(トヨタ・カムリ)だった。

 結局、このふたりはワン・ツーフィニッシュを飾り、カイル・ブッシュは当時NASCARカップシリーズ参戦2年目だったトヨタに初勝利をもたらした。アメリカのマニュファクチャラー以外がNASCAR最高峰シリーズで優勝を飾ったのはジャガーが優勝した1954年シーズン以来のことだった。

2008年NASCARスプリント・カップ第4戦“コバルトツールズ500”のチェッカーを受けるカイル・ブッシュ
2008年NASCARスプリント・カップ第4戦“コバルトツールズ500”のチェッカーを受けるカイル・ブッシュ
2008年NASCARスプリント・カップ第4戦“コバルトツールズ500”を制したカイル・ブッシュ
2008年NASCARスプリント・カップ第4戦“コバルトツールズ500”を制したカイル・ブッシュ

 本来であれば快挙として注目を浴びるはずだった功績は、レース後にスチュワートが発したコメントによって、かすんでしまった。2位でフィニッシュしたスチュワートはチームやトヨタに対して祝福の言葉を残すと誰もが予想していたのだが、彼の発言はショッキングなものだった。

「今日のタイヤは、僕がプロドライバーとしてのキャリアで使ってきたもののなかで、一番ひどいレーシングタイヤだった。グッドイヤーはF1から撤退し、IRLから撤退し、CARTから撤退し、ワールド・オブ・アウトローズからも撤退した。そして、それには理由があった。ろくでもないタイヤしか作ることができないからだ」

 こう言い放ったスチュワートはひどく荒れていた。この発言を聞いたメディアセンターのジャーナリストたちは大いに驚いた。NASCARに参戦しているドライバーたちは歯に衣着せぬ物言いをすることが多いが、シリーズの主要パートナーでもある企業に、これほど直接的な“口撃”を仕掛けたという話は聞いたことがない。

 ドライバーによるグッドイヤー批判はレース後の記者会見でも続いた。3位でフィニッシュしたアーンハートJr.を始めとするドライバーたちも次々と不満を口にした。

 確かに、あの週末グッドイヤータイヤが十分な働きをしなかった。しかし、その原因はタイヤではなく、あまりにも低かった気温にあると私は睨んでいた。事実、アトランタで起きたトラブルが再発することはなかったのだ。

 2008年の“コバルトツールズ500”は見ていて特にエキサイティングなレースではなかったが、レースの裏で起きていたことは興味深かったし、NASCAR初心者だった私には最適なレースだった。

 このあと、私はさらにNASCARを学ぶべく、旧式のNASCARマシンで争われるヨーロピアン・レイト・モデルシリーズにドライバーとして出場し始めた。ちなみに、このシリーズは後にNASCARユーロシリーズへと変化していく。

 また私はNASCARへの情熱を持ち続けていたので、その後数年はノースカロライナに足しげく通っていた。

 今もNASCARはチェックしているが、最後に現地で観戦してからは数年が経過している。私が見たり取材したNASCAR戦の多くは記憶から消えてしまっているが、アトランタで過ごした最初の週末は、いまでもはっきりと心のなかに残っている。

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サム・コリンズ(Sam Collins)
F1のほかWEC世界耐久選手権、GTカーレース、学生フォーミュラなど、幅広いジャンルをカバーするイギリス出身のモータースポーツジャーナリスト。スーパーGTや全日本スーパーフォーミュラ選手権の情報にも精通しており、英語圏向け放送の解説を務めることも。近年はジャーナリストを務めるかたわら、政界にも進出している。

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