リスタートからターン1に向け、レーシングスピードに復帰して猛然と突進した隊列を突然のレインシャワーが見舞い、先頭のジャスティン・ハーレイやダニエル・ハムリック、そしてハムリンのカムリらが突如グリップを失い、そのままの速度でウォールに激突。後続の車両も速度を殺す方法がないまま、成す術なく白煙を上げて巻き込まれていく。
結局、この13台が絡んだアクシデント直後に、NASCARのスチュワードは雨が止むのを待つため赤旗中断を決定。ここから実に3時間19分57秒のレースサスペンデットに突入する。
「ターン1の途中で雨に遭遇し、完全にコントロールを失った」と、マシンを降りた直後に語ったハムリン。「隊列の最前線で加速し、ターン1に入る10秒ほど前に降って来たんだ。ファンもそれを感じていたはずさ」
この混乱をエプロン側への回避で悠然とくぐり抜けたディロンは、残り21周のリスタートに向けデイトナ制覇の最有力候補と見られたものの、再開後からオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)に後れを取る展開に。
しかし残り3周のターン1で背後に迫ったディロンが、2号車フォード・マスタングのリヤに“タッチ”し、ラップリーダーがバランスを崩す間に前に出ることに成功。最後は僚友レディックを護衛につけ、参戦37台中同一周回わずか10台、完走17台の混戦を制し、大逆転でのプレーオフ進出滑り込みを果たした。
「本当に多くのことが起こり過ぎた。ホワイトフラッグを見たとき、また背後で誰かが『何かを起こす』んじゃないかとハラハラしていたし、その意味でもリードを奪っておきたかった。それを手にして、正直少しホッとしたよ」と、混沌の1戦を振り返った今季初優勝のディロン。
「僕らも最後まで調子が良かったのは分かっていたけど、彼(シンドリック)はあらゆる種類のランをチェックする良い仕事をしていた。それで彼を少しプッシュしすぎて、ルーズにしてしまった。その後はギャップを築けて、背後には8号車(レディック)も来てくれたんだ」
一方、ボトムまで滑りながら見事なコントロールで体勢を立て直し、最後は護衛のディフェンスを掻い潜って勝者からわずか0.140秒遅れの3位まで戻ったシンドリックは、ウイナーの動きに関して「あのバンプも公正なゲームだ」と応じた。
「それはシーズンのどのレースでも、フェアゲームだと思うよ。彼がこのレースに勝つことは、大きな意味があったからね」と、勝負の醍醐味を語ったシンドリック。「僕が走るのが遅すぎたのか、彼はコーナーへの入り口で僕を直撃した。でもセーブできて良かったよ。まだフィールドを抜けて戻り、最後にショットを決める力があったからね。そのことはうれしく思うけど、負けるのはいつだって嫌いさ!」
これでシンドリックは14番手、勝者ディロンは最後尾16番手でプレーオフ進出を確定。最後のひと枠を争っていたブレイニーは7番手まで上げて通過。続く第27戦『クックアウト・サザン500』が、プレーオフ第1ラウンド開幕戦として、南カリフォルニアのダーリントン・レースウェイで9月2〜4日に争われる。



