バーレーンGPの初日、小林可夢偉がフリー走行を欠場した。可夢偉のF1人生で初めてのことである。ケガや病気が理由ではない。テスト兼リザーブドライバーのロビン・フラインスが可夢偉のマシンに乗るためである。
チームは明らかにしていないが、持参金を持って来たテスト兼リザーブドライバーに、フリー走行1回目を走らせることは珍しくはなく、資金を必要にしている下位チームほど、その傾向が強い。
問題は2台のうち、どちらのマシンに乗せるかだ。通常は、セカンドドライバーのマシンに乗ってもらうケースが多い。なぜなら、テスト兼リザーブドライバーの走行データよりも、レギュラードライバーの走行データとフィードバックの方がセットアップを進める上では重要で、そのためにはナンバーワンドライバーが走ってくれた方が得策だからである。今回はケータハム以外にも、ウイリアムズとザウバーがテスト兼リザーブドライバーを走らせたが、ウイリアムズはバルテリ・ボッタス、ザウバーはエステバン・グティエレスと共にセカンドドライバーを休ませていた。
しかし今回、ケータハムは可夢偉のマシンをフラインスに与えた。では、可夢偉はケータハムのナンバー2ドライバーかというとそうではない。それはスペアパーツの使用に関するチームの待遇と、結果が物語っている。
ケータハムは開幕戦に新しいフロントウイングを3つ持ち込んだ。可夢偉とエリクソンがそれぞれ1つずつ使い、1つは2人の共通のスペアに回した。ところが、レースで可夢偉がクラッシュ。1つ減って、新ウイングは2つだけとなった。そのマレーシアGPでは今度は予選でエリクソンがクラッシュ。バーレーンGPでは、ついに新ウイングは1つだけとなった。そのウイングを午後のフリー走行2回目で装着したのが、可夢偉だった。
そして、いきなり臨んだフリー走行2回目で、可夢偉はチームメートを上回った。もちろん、チームメートのマーカス・エリクソンは2回目のフリー走行でトラブルに見舞われてはいるものの、それはソフトのニュータイヤを装着してタイムアタックをした後。それでも可夢偉はチームメートに0.9秒の差をつけた。ボッタスとグティエレスがチームメイトにそれぞれベストタイムで負けたのとは違う結果だ。つまり、可夢偉はケータハムでセカンドドライバーではない。
今後、チームがフラインスをどのように起用するのかは未定だが、フリー走行1回目を初めて休んで臨んだ2回目のフリー走行で、ノートラブルで33周を走行した可夢偉。「これからもずっとフリー走行1回目を休んでもいい。だって、開幕2戦ではフリー走行1回目でいつもトラブルに見舞われていたから」と笑って話す。フリー走行1回目を休んだことより、2回目のフリー走行で33周を走り込めたことの方が、収穫は大きかったようだ。