マクラーレンの翌日となる1月25日に新車『F14 T』を発表したフェラーリ。F14 Tはフェラーリの公式ウェブサイトで112万3741人のファンによる投票によって、F166ターボ、F14マラネロ、F14スクーデリアなどを抑えて命名された名前である。

 F14 Tの最大の特徴は、カモノハシのくちばしのように低く、かつ長く伸びたノーズである。これは2014年の新しいレギュレーションに適合するようにフェラーリのデザイナーが考えたアイデアであるが、前日に発表したマクラーレンのノーズと対照的だという点で非常に興味深い。

 レギュレーションが大きく変更されると、必ず出てくるのがデザイナー(チーム)による解釈の違いである。2009年も幅広くなったフロントウイングを吊り下げるノーズは、さまざまな太さと高さが現れたものである。それは決して正否の差から生まれるものではなく、マシン全体の空力をどのように考えて設計しているかというコンセプトの違いによって生じるものである。したがって、マクラーレンとフェラーリのマシンはかなり異なる発想で作られていることがうかがえる。

 ノーズ以外にもF14 Tには特徴的な部分がある。それはモノコックの高さである。2014年のレギュレーションではノーズの高さだけでなく、モノコックの前方バルクヘッド部分の高さがこれまでの625mmから100mm引き下げられ525mmになった。マクラーレンはコクピット前端からバルクヘッドへ向かって緩やかな傾斜をつけ、その後ノーズの先端までほとんど一直線に伸びているが、フェラーリはコクピット前端からしばらくはほぼ水平に前方に伸びた後、バルクヘッド手前で急傾斜させ、その後再び緩やかにノーズへ伸びていく方法を採用したのである。

 フェラーリがこのような処理を施した理由として考えられることは、マクラーレンと異なり、フロントのサスペンションに採用しているプルロッド方式を今年も継続していることである。現在のF1ではプルロッドとプッシュロッドの差は、メカニカル的には優劣の差はほとんどないと考えられている。つまり、フェラーリがプルロッドを採用し続ける理由は、空力的なアドバンテージがそこにまだ存在していると考えているからである。そして、そのためにはサスペンションの取り付け位置をできるだけ変えたくなく、マウントする部分のモノコックの高さを維持したのではないだろうか。

 しかし、その仮説が正しいとすれば、ひとつの疑問が生まれる。それはノーズが特徴的なF14 Tは、新しいレギュレーションに合わせた空力処理を行っているものの、空力のコンセプト自体は13年までのものを継承しているのではないだろうかということだ。それはチーフデザイナーとして、昨年同様、ニコラス・トンバジスが開発者として名を連ねていることでもわかる。

 ロリー・バーンが復活し、自社の風洞も昨年末から稼働を始めたフェラーリ。しかし、それらが本格的に機能し始めるのは、今年ではなく2015年のマシンから。それはフェラーリが今年の勝敗のポイントを別な分野になると考えているからにほかならない。それはジェイムズ・アリソンのこんなコメントからもうかがえる。
「今シーズン、もっとも重要な要素となるのはパワーや空力ではなく、信頼性になると思う」

 一見、特徴なノーズをまとった過激なマシンに見えるF14 Tだが、空力的にはじつはコンサバティブなマシンだといったら、言い過ぎだろうか。

 

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