来年のF1グランプリの開催カレンダーがまだ決まっていない。シリーズの核をなすヨーロッパの国々のレースは日程も大方決まっているが、新しくカレンダーに加わる(加わりたい)レース、あるいは反対にカレンダーから落ちる可能性のあるレースなどが錯綜している。最終決定までにはまだしばらく時間がかかりそうで、12月にはなってしまうだろう。
今一番の問題になっているのは第2のアメリカGPとも言えるニュージャージーGPの有無だ。開催契約は2011年に結ばれているが、肝心のサーキットがまだ完成していない。理由は資金難で、今年の6月に初開催の予定だったものの結局開催には至らず、来年も不確かだ。そのために開催権を持つバーニー・エクレストンの会社は、ニュージャージーGPは開催不可能だと予測し、代わりにメキシコGPを開催しようと目論んでいる。
その他に話題に上がっている噂によれば、インドGPと韓国GPがカレンダーから落ちるのではないかという。その代わりにオーストリアGPが復活(開催サーキットのオーナーであるレッドブル社は、正式契約した旨を発表している)し、新しくロシアのソチGPが行われる可能性(開催申請を提出できなかったとも言われている)がある。つまり、消滅したり新しく誕生するF1グランプリのために、最終的に2014年も20レース(2013年は19戦だが)は確保されるだろう。下記は2014年のF1開催カレンダーの現状だ。
開催が決まっているレース
・オーストラリア
・マレーシア
・中国
・バーレーン
・スペイン
・モナコ
・カナダ
・イギリス
・ドイツ(ホッケンハイム)
・ハンガリー
・ベルギー
・イタリア
・シンガポール
・日本
・アメリカ(オースティン)
・ブラジル
・アブダビ
初開催・開催未定のレース
・インド
・ニュージャージー
・韓国
・ソチ
・オーストリア
・メキシコ
初開催・開催未定のレース中、ソチ、オーストリア、メキシコが行われることになれば、2014年は全部で21戦になる。20戦を越える場合はフェラーリ、マクラーレン、レッドブルのうち2チームが賛成しなければならない。チームは20戦でも多すぎると考えており、21戦に賛成するチームはいないはず。となると、上記3レースのうちひとつが開催されないことになる。
さて、ここからが本題だが、開催が決まっているレースでもいつその権利を捨てることになるか分からない。と言うのは、ヨーロッパ圏内のレース以外は(主催者がエクレストンに支払う)開催権料が非常に高く、それが毎年10%ずつ上がっていく。例えばマレーシア、アブダビ、シンガポールといったレースは揃って60億円を超える開催権料を支払っており、国や自治体からの支援がなければとても続かない。それでもF1グランプリ開催に伴う経済効果は数百億円と言われており、なんとか開催料を捻出しているのが現状だ。これから先、新しく開催を希望する主催者に対しては、更に高額な開催料を要求するはずだ(ちなみに豆知識として、イタリアGPは7億円、モナコGPに至っては開催料はただといわれている。モナコGPのないF1グランプリは考えられないからだろう。存在価値の問題だ)。
しかし、こうして詰め込まれるF1グランプリ、チームや関係者は毎週旅の空で疲れもピークになる。もう少し理にかなった(つまり余裕のある)カレンダーにして欲しいと考えるのは当然だろう。
ところで、どのレース・シリーズでも宝物のようなレースが必ずひとつはある。F1グランプリはモナコ、インディはインディアナポリス500マイル(インディ500)、WECはル・マン24時間レースだ。こうしたビッグイベントは必ず5月か6月に行われるが、これには理由があるそうだ。つまり、長いシリーズの中だるみを引き締めるためだという。では、そのメインイベントが終わった後のシリーズは盛り下がらないのか、という心配が頭をもたげる。そこは心配ご無用。シリーズの性質上、終盤になって選手権争いが盛んになるため、盛り下がることはないという統計が出ている。
ただ今年、WECを全戦取材していて、このシリーズはル・マン以降に行われるレースはややもすれば人気が下がる傾向にある。圧倒的強さを誇るアウディの快進撃がシリーズを単調にしている気はするが、昨年のようにトヨタが後半戦で勝利を重ねてくれば流れは変わるはずだ。しかし、それにしても他のレースに比べてル・マンの存在が大きすぎる。そこで一考。ル・マンをシリーズの最終戦に持ってくるのはどうだ? そうすればシリーズは最終戦に向けて確実に盛り上がる。ただ、ル・マンの日程変更が無理だとすれば、ル・マンの次のレースを開幕戦とし、年をまたいでのシリーズにするというのはどうだろう。日本の会社や学校は年度制を採用し、4月から翌年の3月までを1年度としているが、その例に倣えば、決して不可能なことではないと思うのだが……。
赤井邦彦(あかいくにひこ):世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。
AUTOSPORTwebコラム トップ⇒http://as-web.jp/as_feature/info.php?no=70