中国GPでフェルナンド・アロンソがチームメイトのフェリペ・マッサに対してアグレッシブなオーバーテイクを行ったことから、両者の関係が悪化しているのではとの推測が生じているが、フェラーリはこれを否定した。

　不安定な天候になった中国GPで、アロンソは3番グリッドからスタートでトップに立つが、ジャンプスタートのペナルティをとられ、マッサの後方を走行することに。その後、セーフティカーが出動、マッサとアロンソは続いて走行し、ピットに向かうが、アロンソはピットレーン入口の速度制限区間手前で挙動を乱したマッサをコース外にはみ出させる形で追い抜き、先にピット作業を行い、コースに復帰した。後ろで待たされたマッサは大きく順位を落とした。最終的にアロンソは4位でフィニッシュしたが、マッサは9位にとどまり、ドライバーズランキングでもアロンソが先行する結果になった。

　この行動についてアロンソは、「相手がチームメイトでなければこの件については話す必要もないぐらいだし、これは僕にとって当たり前の行動だ。もちろん僕らの関係にはまったく影響はない」とレース直後にコメントしている。

　一方のマッサは次のようにコメントしている。
「ヘアピンからの立ち上がりで水溜りに足をとられてマシンのコントロールを少し失った。それで彼が僕のインに入り込み、ピットレーンの入口前で僕を抜いていった。それで僕は彼のピットストップが終わるまで待たされることになり、順位を落とした」
　さらにマッサは、レース直後、スペインとブラジルのメディアに対し、「アロンソが隣に並びかけてきた。それに気付いてこのままでは事故になるかもしれないと思い、チームのことを考えて行動した。その結果順位を3つ以上落としたんだ」ともコメントしたと伝えられている。

　この一件によってふたりの関係が悪化かという報道がなされたのを受け、フェラーリのチーム代表ステファノ・ドメニカリとフェラーリ会長ルカ・ディ・モンテゼモロは、それぞれそういった報道を否定している。

「あれは単なるレース上の出来事だ」とドメニカリ。
「後から録画で見た。ふたりのドライバーの間には全く何の問題もない。常に優勝を狙ってレースをしていれば、こういう瞬間もあるものだ」
「フェルナンドはレーサーなのだ。そして、フェリペは非常に立派な行動をしたと言いたい。彼の気持ちは理解できる。しかしこの件で我々の哲学が変わることはなく、私にとってはそれが最も重要なことだ」

「アロンソとマッサの間にいさかいなどない」とディ・モンテゼモロも言う。
「彼らは自分たちがやらねばならないこと、今後やり続けなければならないことは何なのか、理解している。彼らはフェラーリのためにレースをしているのであり、自分自身のためにレースをしているわけではない。それを彼らは分かっている」

　また、フェラーリは、「誤った論争」というタイトルのリリースを発表、一部メディアの報道を非難した。
「一部の報道機関が中国GP後のフェリペ・マッサのコメントの一部を引用し、文脈を無視して伝えた。フェルナンド・アロンソが19周目にピットレーン入口でチームメイトをオーバーテイクしたが、それによってふたりのドライバーの間に悪感情を生じさせようとしている者がいる。ふたりのドライバーはレース後、とてもすっきりした状態であり、今回の出来事によってふたりの関係が変わることは全くない。フェリペとフェルナンドは、スクーデリアのエンジニアたちと共にヨーロッパに同じ飛行機で戻った」
「マラネロのスポークスパーソンは、上海から電話でこうコメントしている。『昨日フェルナンドがフェリペをオーバーテイクしたが、これはレース中のひとつの出来事に過ぎない。私はこの件をそう扱う。我々のドライバーたちはコース上でどう振る舞うべきかをわきまえており、それを今回も披露してくれた。当然ふたりとも優勝を狙っており、ファイティングスピリットを持ってレースを戦っている。しかし一方でひとつの極めてシンプルなルールも尊重している。そのルールとは、“個人の幸福よりチームの幸福が重要である”ということだ』」