2016年、最初のバルセロナ合同テストがスタートしてまもなく、シェイクダウンを担当していたジェンソン・バトンがマシンを降りて、モーターホームへ向かった。そのときマクラーレン・ホンダにとって2016年も厳しいシーズンになるのではないかと案じた──。

 しかし、それは杞憂に終わった。昨年からチーフエンジニアとして、ホンダの現場エンジニアたちを統率している中村聡は次のように説明する。

「吸気系周辺のある部分に、もともと抱えていた問題があったんですが、今回のテストにはそれを改善する部品が間に合わないということで、トラブルが出るかもしれないとわかりながら走らせていました。だから、もしトラブルが出たら、どう対処すべきかもわかっていて、問題が起きたあとは少しパフォーマンスを犠牲にしてでも周回数を稼ぎたかったので、使い方を変更して走らせることにしました」

 要するに、午前中に見舞われたトラブルは想定内の出来事だったのだ。

 逆に、この日ホンダは予想を上回る出来事も経験した。一度コクピットを降りながら、再び乗り込んでからはチェッカーフラッグが振られるまでテストを続けたバトンからの、パワーユニットに対する評価である。

「今日一番驚いたのは、デプロイが大きく改善されていたことだ。1日を通して安定して働いていたし、ロングランでも機能していた。デプロイが改善されたおかげで、マシンの他の弱点も明確になり、今後はマシンをより早く進化させていくことができるだろう」

 その言葉を、テスト終了後のデブリーフィングで聞いたという中村チーフエンジニアは「だって、さくらの研究所のエンジニアやミルトンキーンズのスタッフが、ここまで必死に頑張ってくれましたから」と思わず微笑んだ。しかし、こうも続けた。

「でも私たちが目指す目標には、実はまだ足りていない部分もある。もう少し改善したパワーユニットをできるだけ早く投入したい」

 初日マクラーレン・ホンダのバトンが記録したベストタイムは11台中、6位。しかし、タイムよりも走破した周回数に1年間の成長を感じた。バルセロナ合同テスト初日に刻んだ84周は、昨年最初のへレス・テスト4日間での合計79周を、すでに超えている。

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