いよいよスタートを迎えた2013年のル・マン24時間。このレースでは、ミシュランが多くの車両にタイヤを供給しているが、ル・マンに参戦する意義、そして再びF1に戻る意志があるのかということについて、ミシュランタイヤのモータースポーツ総責任者であるパスカル・ブワノが語ってくれた。
今回のル・マンでは、ミシュランは参加56台中37台にタイヤを供給。このル・マン24時間、そしてWEC世界耐久選手権というレースについて、ブワノ責任者は「ミシュランにとって非常に重要な位置づけだ。耐久性というところにポイントを置くと、ひとつのタイヤでこれだけ特殊な状況に対応しなければならないレースは他になく、かつ耐久性と速さをひとつのタイヤで担わなければならない」とその厳しさを語った。
「特にル・マンは24時間という長時間をを走り、晴れれば非常に路面温度が上がり、雨が降ったり寒くなれば一気に路面温度は冷えていく。こうした状況に対応しなければならない。これだけ厳しい環境の中で条件を満たしたタイヤを供給することは、技術革新をできる環境にある」
また、ライバルであるダンロップがタイヤを供給していることもあり、「我々と同じ条件でライバルがどのレベルにいるのか、そして我々がどれほど実力があるのかを計ることができる」と、ライバルの存在という点によりル・マン、そして日本のスーパーGTがミシュランのモータースポーツ活動の中で、重要な位置づけであると語った。
さらにブワノ責任者は、ル・マンの重要度について、現代のF1との比較という観点から語ってくれた。「これほどの厳しい条件を満たし、技術を革新し、レースの中で学び、ライバルの良いところも吸収することができる。そういった意味では、我々にはF1よりもル・マンの方が重要だ。F1の世界では、新しいタイヤのテクノロジーを入れる要素はもうなくなっている」とブワノ。
「F1よりもスーパーGTの方が、我々タイヤメーカーとしてやらなければならないことや、勉強できることははるかに大きい」
では、ミシュランが今後F1に復帰することはあるのだろうか?
「今はピレリがF1のタイヤを供給しているので、すぐに参戦する予定はないよ。もしミシュランがF1にカムバックするなら、今のF1におけるレギュレーションが、よりタイヤのテクノロジーが活き、チャレンジするようなものにならなければ興味は湧かないだろう」とブワノは続ける。
「必ずしもコンペティターがおらず、競争ができないからF1に参戦しないということではなく、課せられる技術的なハードルをもっと高くしてもらわなければ意味はない。ル・マンはそういう点では素晴らしい場所なんだ。例えば、2014年にはクルマのサイズが変わらないのに、タイヤの幅は細くなる。こういう厳しい条件を課せられればハードルは高くなり、技術的な進歩を望める。そういう要素が大事なのだ」
「タイヤを革新していくにはイノベーションが重要であり、科学的、物理的な技術を解決していかなければならない。レースという世界は、そういう意味で最高の研究室だ。もしル・マンがワンメイクになり、コンペティターがいなくとも、こういった要素があれば挑戦していきたいし、ミシュランはこういう挑戦が大好きなんだ」
「スーパーGTは特に、レースとレースの間に3週間ほどしかなく、次から次へと開発していかなければならない。そして、それがすぐに結果として表れる。我々はレースを研究室という世界でとらえている」
「我々の2014年ル・マンへの挑戦は、週明けの月曜日にもう始まる。レースから得られたものを分析し、WECが終わった冬から、アウディ、トヨタ、そして新たに参戦するポルシェとも、タイヤを一緒に開発していく」