アメリカ・コロラド州、コロラドスプリングスにあるパイクスピークで開催中の「2014パイクスイーク・インターナショナル・ヒルクライム」。現地時間29日(日)に行なわれた決勝では、EV改造車で争われるエレクトリック・モディファイドクラスに参戦したミツビシチームのグレッグ・トレーシーが9分08秒188で優勝(総合2位)、増岡浩が9分12秒204でクラス2位(総合3位)に入り、『MiEV Evolution III』1-2フィニッシュを飾った。なお、総合優勝はアンリミテッドクラスに「ノルマ M20 RD リミテッド」で参戦したロマン・デュマ(9分05秒801)となった。
レースウイークに入って以降、すべてのセッションでクラス1-2を記録するなど、絶好調を維持してきたミツビシチーム。練習走行で使用される全長20kmのコースを3分割にしたセクションのすべてで速さを見せ、唯一アンリミテッドで参戦するポルシェのワークスドライバーのロマン・デュマが、総合優勝争いでのライバル……と目されていた。ただし、デュマの駆る「ノルマ M20 RD リミテッド」と、ミツビシの「MiEV Evolution III」のタイム差を比較すると、練習走行までは各セクションで10秒程ミツビシ勢が遅れを取っていた。しかしフルコースとなる決勝でミスやアクシデントが起こるか? そして天候と路面状況がどうなるか……この点に勝負の焦点が絞られていた。
迎えた決勝。アンリミテッドでの総合制覇を目指してスタートしたデュマは、ノルマに積まれたHPD製K20ターボの威力もあり、序盤から素晴らしいペースで登坂路を駆け上がって行く。しかし、そのパワーに堪え兼ねたか、後半セクションに入ると「タイヤがタレてきてしまった。それでペースが落ちたんだ」と本人が語るようにタイムが伸び悩み、9分の壁を越える事は出来ず。「昨年の(セバスチャン)ロウブの記録(8分13秒878)に迫れず残念」と、念願の総合優勝を果たしながらも、デュマは少し不満そうだった。
一方、総合優勝に向け一縷の望みを託してスタートしたEVモディファイドクラスのミツビシチームは、トレーシー、増岡ともに渾身のアタックを敢行。天候に阻まれる事もなく「MiEV Evolution III」のパフォーマンスを解放したトレーシーが、デュマのタイムにあとわずか“3秒”と迫るタイムを記録。「決勝ではブレーキを酷使してフェード気味に。それさえなければ総合優勝も夢ではなかった」と本人が語る程のアタックで、見事EVモディファイドクラス優勝を勝ち取った。
またそのトレーシー同様、万全のアタックを見せた増岡も総合3位、クラス2位に入り、マシン性能の高さを証明してみせた。「個人的には95点の走り。前輪の内圧が少し高かったかもしれない。アンダーステアが顔を出すコーナーもあったのでね。それでも、三菱の優勝は本当に心から嬉しい。グレッグ選手におめでとうと言いたいですね。彼は『MiEV Evolution III』を完全に乗りこなし、ウイナーにふさわしい素晴らしい走りをしました」と笑顔でチームメイトをねぎらった。
ミツビシと同じEVモディファイドクラスで注目を集めた日本勢、モンスター田嶋は電気系のトラブルで何度かマシンが失速する症状に悩まされながらも、クラス3位を死守。ゴール後には「電車の加速が止まり惰性で動いている時のような感覚だった」と、コメント。「ゴールできて良かった」と漏らす程のトラブルに見舞われつつの完走だった。また、「チーム・ヨコハマ・EV チャレンジ」の塙郁夫は、システム系のトラブルで後半ペースダウン。ミツビシ以外のEV勢は不運続きの結末となった。