2015年シーズン前半戦を終え、コンストラクターズランキング3位に甘んじているウイリアムズ。第8戦オーストリアGPと第9戦イギリスGPでは、立て続けに新しいパーツを投入。いずれも車体後方のアップデートで、トラクションを得ることが主な目的だった。新パーツを投入した2戦では狙いどおりパフォーマンスが向上。オーストリアGPではフェリペ・マッサが今季初表彰台を獲得し、バルテリ・ボッタスも5位入賞。イギリスGPは表彰台を逃したものの、レース前半はメルセデスを抑えて、ワンツー態勢を築く速さを見せた。
続く第10戦ハンガリーGPの舞台は、低中速コーナーが連続するハンガロリンク。ここではリヤの安定性以上にフロントのダウンフォースが必要となるため、ウイリアムズは新しいフロントウイングを持ち込んだ。これはフェラーリ同様、メルセデスのアイデアを採り入れたもので、メインフラップ下面の形状を翼端板側の部分で修正している。
大きな違いは、イギリスGPまでのフロントウイング(写真:右上の枠内)は湾曲した部分が翼端板に直接、接合していたのに対して、新しいウイングでは湾曲部分と翼端板との間に不規則な間隔を設けていることだ(写真:赤い矢印)。この間隔は前方部分が最も広く、後方へ行くにしたがって狭くなる。つまり、湾曲したトンネル部分を突き抜けた空気流が中央から外側へ導かれるようになっている。おそらく、この空気流はフロントタイヤ内側の空力パーツが多数装着されたアップライトへ向かっているのだと思われるが、問題は新しいフロントウイングに合わせて、いかにセットアップを変えるかである。
ところが、ウイリアムズは新しいフロントウイングを時間的な問題から、ひとつしか用意することができなかった。チーム内の約束で「その時点でチャンピオンシップ上位にいるドライバーに優先権がある」ため、金曜日のフリー走行から日曜日のレースまで、一貫してボッタスが使用。走行データが限られたためか、新フロントウイングの効果は「ほんの少しだけフロントのダウンフォースが増した」(ボッタス)程度の感触にとどまった。予選結果はボッタス6位、マッサ8位。決勝では、ともにノーポイント。
ハンガロリンクでは苦戦するだろう、という予想を覆すことはできず、アップデートの真価を発揮するのはサマーブレイク明けの後半戦へと持ち越された。