今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。F1第15戦ロシアGPの週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視して採点する。(最高点は星5つ☆☆☆☆☆)
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☆ キミ・ライコネン
53周目の4コーナー、確かにインサイドは空いていた。36周目に、ここでボッタスを抜いたものの、次のコーナー立ち上がり加速で抜き返されていたライコネン。最後の勝負。空いているから飛び込んだと言うが滑ってタイヤもロック、当たってしまった。最近スチュワードの判例は、接触事故によって失ったものが大きいほうが「無罪」とされる。ゆえにペナルティ、受け入れるしかないだろう。ただ言えるのは、あの場面で勝負にいかなくては真のレーサーではない。
☆ バルテリ・ボッタス
言動も行動も、ややおとなしめのボッタスが怒るのも無理はない。彼にすれば、いきなりライコネンに襲われて、粘っていたレースを破壊されたのだから。接触事故は両者の見解が異なるから起きる。この一件から何を感じ取ったか、勝負にこだわる意識が今後の彼を、もっと強くする──。
☆☆ カルロス・サインツJr.
土曜に起きた大事故では頑丈なテックプロ・バリア(衝撃吸収材)が彼のマシンにのしかかり、それが心配だった。13コーナーへの進入速度は高く、エスケープゾーンは狭い。メディカルチェックを受けて出走を認められたレース中、体調の変化があったと言う。一時は7番手を走行するも、事故現場でブレーキ破損の末にスピン。父譲りの勇敢さを讃えたい。後遺症など残らぬよう、十分に休養を。
☆☆ ダニール・クビアト
52周目に記録した自己ベスト、決勝中6番手のタイムは予選アタックラップと2.158秒しか違わない。繰り上がって5位の入賞レースを最後まで全力でつらぬき、愛国心の強いロシアのF1人気を、また高めた。
☆☆☆ フェリペ・ナッセ
ザウバー起死回生アップデートの効果をなかなか引き出せずにいたが、ようやく6位。34周ロングスティントではスーパーソフトタイヤでペースを維持、チームの期待に応えた。トロロッソに11点差、コンストラクターズ7位攻防戦も佳境に。
☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
いまやるべきことは新パワーユニット開発のための実戦テスト。250戦目を最後列からスタートせざるをえない空しさを噛み殺し、10位でフィニッシュ。16コーナーでのコース幅走行違反によって11位降格となったが、ワイドラインで攻めるしかなかったのだろう。
☆☆☆ ニコ・ロズベルグ
頭脳派ニコの持ち味、限られたフリー走行データからエンジニアたちと「推定セッティング」を構築。予選3セッションすべて1位は昨年完勝したブラジルGP以来、流れを自分のもとに引き寄せていた。ところが耳を疑うようなスロットル系トラブルが発生、恐ろしい状況に陥り、リタイア。ランキング3位転落は昨シーズンから初めての事態、これでタイトル争いのプレッシャーがなくなり、気持ちを切り替えていけるか。
☆☆☆ ルイス・ハミルトン
鈴鹿の勝利で3冠目が見えた彼の走りは金曜から、やや精彩に欠けるような気がした。スタートでロズベルグの背後につけ、2コーナーまでスリップストリームを駆使。だが、アウトサイドから無理はせずに引き下がった。勝負を急がず、追尾する戦法をとったのはレースペースのデータが少ないので、じっくり構えていこうと判断したから。するとライバルが消え、2番手以下をコントロールする走りに移行した。163戦42勝、通算勝利数でアイルトン・セナを抜き、セバスチャン・ベッテルに並んだ。
☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
最速ラップは1年前のアメリカGP以来、フェラーリでは初めて。ハミルトンがペースを自重していたとは言え、本人は満足気。昨年ここでメルセデス・パワーユニット勢は1-2-3-4-5フィニッシュを達成、ベッテル2位は大いなる前進だ。レース回生パワー増強、マシン信頼性向上に加えて、もうひとつピットストップが確実で2秒2と速かった。昨年6位のアロンソはジャッキ故障でもたつき7秒4だった。今年のチーム総合力は『シューマッハ全盛期』に近づきつつある。
☆☆☆☆ ジェンソン・バトン
契約問題が決着してすっきりしたのか、コース上を生き生きと走っているように映った。パワーユニット設定、シャシーセッティングをアロンソと変えながら、自分の方向性を定めたバトン。予選で久々チームメイトに先行、13番手スタートから2コーナーの混乱を回避して入賞圏内を確保したのは、さすがベテラン。12周目からの最長41周スティントは自らソフトタイヤを選択、例によって直線途中でバンバン抜かれながらも、9位を獲得。さっそくロン・デニスさんや株主たちに結果を見せつけた。
☆☆☆☆☆ セルジオ・ペレス
チームが求めるのは1に速さ、2にコンスタントな結果、3に協調性。今年のペレスは変わった。自滅型レースがまったくなくなり、リタイアはたった一度(ハンガリーGPのブレーキトラブル)。今季ここまでの予選ベストは4位、決勝ベストは5位(どちらもベルギーGP)。ニコ・ヒュルケンベルグと戦略を分けるチーム方針にも忠実に従い、どちらかが上位を狙ってくる。ここでは彼の得意技、リヤの摩耗を防ぎ、41周をソフトタイヤでカバー。終盤ボッタスとライコネンに抜かれたとき、無駄な抵抗はしなかった。意地を張っていたら完全にタイヤを壊していたかもしれない。5番手に落ちたが、最終ラップに再び3位へ。よく耐えたメキシカン、ロシアGPにスパイシーな、ひと味を!