小林可夢偉とともに、ケーターハムからF1に初参戦することが決まったスウェーデン人ドライバーのマーカス・エリクソン。可夢偉とともに一躍注目を集める彼が、ここ数年主戦場として来たGP2にステップアップする前、全日本F3選手権にも参戦していたことを覚えているファンも多いだろう。

 母国スウェーデンのカートで頭角を現したエリクソンは、ツーリングカーや耐久レースで活躍していたフレデリック・エクブロムに見いだされ、フォーミュラの世界へ。2007年にはフォーテック・モータースポーツから参戦したイギリスのフォーミュラBMWでチャンピオンを獲得。翌08年はイギリスF3にステップアップし、1勝をマーク。ランキング5位を得ると、翌09年はPETRONAS TEAM TOM'Sと契約し戦いの場を全日本F3選手権へと移した。

 日本でのエリクソンは、同郷の先輩である元チャンプカードライバーのケニー・ブラックのサポートの下、当時チームメイトだった井口卓人や国本雄資、さらにスリーボンドの安田裕信ら、現在国内で活躍するドライバーたちと激しい戦いを繰り広げた。開幕からポールポジションを奪うなど、エリクソンの速さは際立っていたものの、2年目のシーズンを戦う井口も好調で、開幕から3連勝をマークしたのは井口。特に富士での開幕戦では最終ラップまでトップをキープも、途中に自身のミスから背後に詰め寄って来た井口に最終コーナーでインに飛び込まれ、結果、井口に0.036秒差で破れてしまった。

 レース後、エリクソンは「実は、あれが最終ラップだと思っていなかった。あともう1周あると思っていたんだ。最終ラップだと分かっていたら、もう少し違うアクションをして、トップを死守していたんだけれど……」と苦笑い。速さはあるが、どこか詰め切れない若きエリクソンを担当するトムスの山田淳エンジニアは、「速さは持っているけれど、まだまだF3を分かっていない部分も多い」と評していた。

 エリクソンの日本での初勝利は第5戦の鈴鹿。2勝目は第8戦富士。その後第10、11戦を連勝も、タイトル争いでは井口が優位に立ち続け、3ポイント差で井口がエリクソンをリードという状況で菅生での最終第16戦を迎えた。
 この第16戦、エリクソンはポールポジションを獲得するも、スタートで出遅れ井口の後塵を拝する。そのまま井口の後ろでゴールすれば、タイトルは井口の手に渡る状況だったが、エリクソンは執拗にアタックし続け、最終的にオーバーテイク。「タクトを抜かなければ、チャンピオンにはなれない。迷いはなかった」と、全日本F3王者となったエリクソン。開幕からの僅かな期間で精神的な成長も感じさせた。

 その年の“F3世界一決定戦”第56回マカオGPでエリクソンはポールポジションを獲得。予選レースでも2位フィニッシュを飾り、国本京佑に続くトムスによる連勝を狙うも、決勝レースではスタートで出遅れた上にアンダーステアに苦しみ4位。惜しくも表彰台には届かなかったが、現ウイリアムズのバルテリ・ボッタスやマルシャのジュール・ビアンキ、今季レッドブルに昇格したダニエル・リカルドらを大きく上回るパフォーマンスを見せた。

 翌10年からはGP2へ。しかしエリクソンはバレンシアで初優勝を飾るも、初年度は伸び悩みランキングは17位と低迷。11年はトップチームであるiスポーツに移籍も未勝利でランキング10位、12年は終盤に調子を上げてベルギーでキャリア2勝目をマークしランキング8位、昨季はドイツで優勝を飾るなど、ランキング6位。時間はかかったが、じりじりと地力をつけて来たドライバーといえるだろう。

 F3時代には若さ故のミスも散見されたものの、このGP2での4年間で、エリクソンはどれほどの変貌を遂げたのか。その彼をF1で、しかも可夢偉という絶好のお手本のチームメイトとして見ることが出来れば、今シーズンのF1がより一層楽しみなものとなるだろう。

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