アメリカGPの金曜午後、小林可夢偉が開催地オースチンのサーキットに姿を現した。ケータハムは今週末のアメリカGPと次のブラジルGPに欠場するが、可夢偉が視野に入れているのは来季以降のF1シート。その可夢偉が現状と今後について語った。
「今年最後のレース(アブダビGP出場)は可能性としては残っていますが、それは本当に状況次第。僕が特に何かできるということはないですけれども、もしチャンスがあれば出るということ。ただ、それ以上に来年に向けてのアプローチが重要なので、今回オースティンに来ました」
可夢偉が急きょ開かれた会見の冒頭で述べたように、今回の訪米は来季に向けてのアピールが目的。今回のケータハムの欠場や問題についてはコメントを避け、はっきりと自分の希望を伝えた。
「あんまり、そこ(ケータハムの状況)について話しても仕方ないことだと思っています。乗れなくなったのは非常に残念ですけど、今のチームの状況というのは、これはもう、仕方のないことなのかなと」
「それを考えている時間があるなら、来年に向けて考えている方が意味があるので、無駄な時間を費やしたくないということだけですよね」
可夢偉の視線はすでに未来に向かっている。それはつまり、F1を諦めていないという可夢偉の意思表示でもある。
「F1で戦う価値というのはまだまだあると思うし、このF1をいろいろな意味でたくさんの日本にファンに知ってもらいたい。F1にとっては日本はすごく大切なマーケットだろうし、やっぱり自動車メーカーにとってもF1、そしてモータースポーツが流行っている環境がないと、そういうクルマって作っていけないと思う。そういう意味で、なんとしても、ここ(F1)に残って、若い子たちにF1での将来というのを作っていかないといけないと思っています。僕としては簡単な人生を生きようと思ったら、違う道もたぶんあると思う。わざわざ難しいところに行く必要もない。でもやっぱり、自分の中でチャレンジして、小さい頃から夢見ていたことができればなと思っています」
だが、実際には来季のF1はシートがほとんど埋まっており、残されている数席も実質、持参金が必要で、その額は高騰の一途を辿っている。
「非常に厳しいところがありますね。現実問題、今のF1はお金の問題が先行しているので、正直、僕の中で10億、20億円をすぐに集めてこいと言われても、チームが決まっていない段階で実際には厳しい。もしそれを集められるならば、去年も苦労していなかっただろうし。ましてや僕らが集めて持っていったとしても、すぐにまた値段がつり上がるような状況なので、現実的なチャンスとしては厳しいなと思っています」
来季以降の可能性として、我々ファンが期待するのは2015年から参戦するホンダ&マクラーレンのシートだ。可夢偉はホンダのシートについて明確に希望を延べ、そして自分の役割をアピールする。
「(ホンダのシートは)もちろん視野に入っています。もし、そのチャンスがあるとすれば僕としては本当に嬉しい。1年目から勝ちたいというメッセージは聞いているので、僕自身、自分なりに経験もあると思うし、新しいV6エンジン、ルノーのエンジンも乗ったという経験があるので、うまく利用してもらえれば十分、使い物になると思います」
「(ホンダに入れれば)絶対、貢献できる自信がある」
F1以外のカテゴリーについては「今は考えてない」という可夢偉。F1に残れるならば開発ドライバーも構わないという姿勢は、これまでの可夢偉とはまた違った覚悟を感じる。
「何らかの形でF1に残りたい」
今の可夢偉がF1で勝てる可能性を秘めたベストな日本人ドライバーであるのは誰もが認めるところ。その才能と可能性をこのまま枯らしてしまうのは、日本のモータスポーツ界にとってはあまりに惜しい。この可夢偉の覚悟が報われるか否かは、今後の日本とF1、はたまた日本のモータースポーツの未来への大きなターニングポイントになる。