FIAは、ドライバーの頭部を保護するクローズド・コクピット化の検討材料として、戦闘機型のキャノピーを使用した安全性のテストを行った。The F1 Timesが報じている。
フェリペ・マッサは、2009年のハンガリーGPでルーベンス・バリチェロ(ブラウンGP)のマシンから落ちたスプリングが頭部を直撃し、シーズンを棒に振る大ケガを負った。また、同年にブランズハッチで行われたF2レースでは、元F1チャンピオン、ジョン・サーティースの息子ヘンリーが頭部にタイヤの直撃を受け命を落としている。
ほかにも、昨年のアブダビGPでは、ビタントニオ・リウッツィと接触したミハエル・シューマッハーがリウッツィのフロントウイングの頭部直撃をスレスレのところで免れている。
こうした事故は、オープンコクピットにおけるドライバーの安全性に懸念を高めており、FIAのモータースポーツ安全研究所はドライバーの頭部保護を目的とするクローズド・コクピットの調査を行うことになった。
今月実施されたテストでは、重量20ポンド(約10kg)のホイールを225km/hの速度でポリカーボネート製のジェット戦闘機型キャノピーに向けて発射し、その耐久性が問われた。
FIAが公開したビデオ映像では明確な結果が見られ、軽量なキャノピーはF1マシンにとっても、空力学的な面を含めて最も有効なオプションと考えられる。
近い将来にこのクローズド・コクピットが採用される可能性は低いものの、これらの結果は全F1チームで構成される技術作業部会(テクニカル・ワーキング・グループ)に提示されると見られている。
しかし、ザウバーのテクニカルディレクターを務めるジェイムズ・キーは、ドライバーの安全を高めるこのようなシステムを歓迎するとしながらも、事故の際にドライバーを救出する場面では、逆に妨げになる可能性があると疑問を投げかけている。
「ドライバーは保護されるから安全に関していくらか利益をもたらすだろう。だが、ドライバーを救出する場面では何が起きるかわからない」
彼は、FIAの安全面に対する努力を歓迎する一方で、自らは全体を覆うよりも部分的なシールドにとどめてフロントガラスのようにするのがより良い選択肢であると語っている。