オーストリアGPではスタート直後にリヤの挙動が不安定になり、フェルナンド・アロンソと接触事故を起こしてリタイアしたキミ・ライコネン。その直後にフェラーリの地元、イタリアの自動車専門誌『アウトスプリント』の表紙を飾った見出しは「起きろ、キミ!」だった。
この記事を執筆した記者の情報によれば、現在フェラーリ内でのライコネン後任候補はダニエル・リカルド、ニコ・ヒュルケンベルグ、バルテリ・ボッタスの3人。最も可能性が高いのは、雑誌の表紙にフェラーリのレーシングスーツ姿の合成写真を載せたボッタスだという。
「リカルドに関しては来年まで契約を持っているレッドブルが絶対に離さないだろう。昨年セバスチャン・ベッテルを取られ、もし今年リカルドを引き抜かれれば、2年連続でフェラーリにドライバーを持っていかれることになる。そんなことをヘルムート・マルコが許すはずがない。ヒュルケンベルグは良いドライバーだが、ベッテルもドイツ人なのでマーケティング的にフェラーリ側が難色を示している。その点、ボッタスは速さ、国籍のバランス、年齢的に考えてもベストだ」
ただしボッタスの契約にはオプションがあり、行使する権利はウイリアムズ側にある。したがってフェラーリがボッタスと契約するには、ウイリアムズに対価を支払う必要があると言われている。だが、アウトスプリント誌の記者は「フェラーリは金銭交渉には応じないだろう」と言う。
「ドイツのビルト紙が『ウイリアムズがフェラーリに対して1500万ユーロ(約20億円)を要求した』と報じているが、フェラーリは出しても400〜500万ユーロ(約5〜7億円)」と予想。そして「ライコネンがイギリスGPとハンガリーGPでベッテルと比肩する成績を残せなかった場合は、フェラーリはボッタスとの契約交渉を本格的に開始するだろう」と語る。
そうなった場合、ボッタスが抜けたウイリアムズのシートには誰が収まるのだろうか。
「ザウバーのフェリペ・ナッセだろう。フェリペ・マッサもブラジル人だから、マーケティング的に通常はありえない組み合わせだが、ナッセが持っているスポンサーマネーには勝てない」
そうなると、今度はナッセが抜けたザウバーに空きがでる。現在ザウバーにはフェラーリ育成ドライバーのラファエル・マルチェッロが所属しており、当然候補となるだろう。実現すればジュール・ビアンキに続く、ふたりめのフェラーリ・アカデミー・ドライバーがF1デビューすることになる。フェラーリにとっても良い話で、フェラーリからパワーユニットの代金を割引してもらっているザウバーにとっては、さらなる資金的な援助も見込まれ、双方の利害が一致する。
つまり、ライコネンがフェラーリを追われることで、ステップアップが叶うドライバーたちが事態を見守っているわけだ。ライコネンは、この状況を覆せるのか? 期限と目されているハンガリーGPはフィンランド人の観客が多く集まるグランプリであり、ライコネンにとって得意なサーキット。まだ、あきらめるのは早い。