現在サマーブレイクに入っているF1世界選手権、後半戦もメルセデスの天下は続くのだろうか。前半戦で浮かび上がった綻びから、最強チームの弱点を探ってみたい。
「いまは夏休みを楽しむ気分じゃない。ただクルマに乗って、すぐにでもレースがしたいよ」
これはハンガリーGPで終盤まで2番手を走行しながら、まさかの8位に終わったニコ・ロズベルグがレース後に語ったセリフだ。
次戦ベルギーGPまでの間、F1チームのファクトリーは任意の2週間、強制的に閉鎖され、サーバも遮断されて開発できない決まりとなっている。前半戦を締めくくるレースが不本意な展開となったロズベルグは、気持ちを切り替えて夏休みを楽しめているのだろうか。
ハンガリーGPのレース終盤にロズベルグがダニエル・リカルドと接触する遠因となったのは、バーチャルセーフティカーが導入された42周目にピットへ入ったときのタイヤ選択だった。第2スティントをミディアムで走行していたロズベルグに対して、チームはソフトではなく、もう一度ミディアムを装着した。その理由をメルセデスのトト・ウォルフは次のように説明している。
「いつピットインして来てもいいように、常にどちらかのタイヤをウォーマーに包んで用意している。あの時点で準備されていたのは、ミディアムだった。まだレースの残り周回は27〜28周あった。ミディアムからソフトへのクロスオーバーを考えると、あと1周ピットに入るタイミングが遅ければソフトに変更していただろう」
ウォルフは技術面を統括しているわけではないが、チームを代表してメディア対応を行う存在。しかし、彼の言葉を聞いたF1関係者で「ウォルフの説明には疑問が残る」と語る者は少なくない。そのひとりがピレリの、あるエンジニアだ。
「金曜日のロングランのデータから、ソフトは最低でも25周、状況次第では28周あたりまで引っ張れると予測していた。したがって、あのタイミングでミディアムとソフトのどちらでも装着できる権利を有していたロズベルグにパフォーマンスが良いソフトを選択しなかった理由がわからない。予定のタイミングまで10周、20周残しているというのならまだしも、たった1周だよ。しかも逆転優勝できるチャンスがあったのに……」
もうひとりの関係者は、42周目のタイヤ交換よりも、ロズベルグが1回目のピットストップでミディアムを選択したことに疑問を投げかけた。
「ピレリがハンガロリンクに持ってきたソフトとミディアムは予選で1周約2秒、レースペースでも1周約1秒の差があった。もちろん、ソフトのほうが速い。したがってミディアムは完全に“ジョーカー”のタイヤで、いかに短く使うかがポイントだった。しかも土曜日の夜に大雨が降って路面のラバーが流されていたから、グリップ力に劣るミディアムは路面ができあがるレース後半に使いたい。そのような状況にもかかわらず、ロズベルグは第2スティントでミディアムを選んだ。もちろんライバルと異なる戦略を採るのは不思議なことではないが、それは2種類のタイヤの性能差が近いとき。あれだけ大きな差がある場合、奇をてらった作戦は通用しないはずなのに……」
メルセデスはモナコGPでもバーチャルセーフティカーから実際のセーフティカーが出勤するタイミングで、首位を走行していたハミルトンに無用なピットインをさせるという失態を犯した。最強のパワーユニット、最高のマシンを有しているメルセデスだが、決して無敵ではない。ベルギーGPからはスタートをドライバーが自力で行うよう規則が厳格化される予定となっており、ポールポジションから逃げ切って優勝というパターンは難しくなるはず。戦略面に、やや不安を抱えるメルセデスが「勝てない」レースが増えるかもしれない。
